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アーヴィング・ゴフマンの社会学〜ありふれた「コミュニケーション」を考える〜: 役割距離

アーヴィング・ゴフマンの社会学を通じ、我々にとってありふれた「コミュニケーション」について考える。

役割距離

人はコミュニケーションにおいて「印象操作」を行いますが、それはその場でその人に期待されている「役割」通りに演じるというだけではありません。

時に人はその「役割」を演じるのに嫌気がさし、その「役割」を演じなくてもよい場へと向かうか、「役割を演じない」という振る舞いを見せます。

この「役割を演じない」という振る舞いを、ゴフマンは「役割距離」と呼びました。

参考文献

私は「役割」通りの人間じゃない!

なぜ「印象操作」をするのかと問われれば、自分をよく見せるため、その場の「空気」を壊さないためなど、人それぞれ状況によって異なるでしょう。ただし皆さんもご存じの通り、人間はただ期待されている「役割」を演じるだけの存在ではありません。

前の学校の教室を例として挙げれば、授業中教員の話を聞き、ノートをとるという「役割」を期待されている学生のなかにも、ケータイをいじる、教員に茶々を入れるという逸脱した行動をとる者、もしくはノートをとる振りをして絵を描くなど、一見すると「役割」通りに振る舞っているが実際にはそうではない行動を密かにとる者もいます。たちの悪いものになると、その逸脱をあからさまに教員に見せつけてくる学生もいるでしょう。このとき、学生は自分以外の人間に「私はあなたたちの期待する役割は演じませんよ」というメッセージを込めたパフォーマンスをしているといえます。

          

このように、その場において期待されている「役割」を演じないというパフォーマンスおよび態度を、ゴフマンは「役割距離」と呼びました。

この「役割距離」を行うには、ある種の優越感が原動力となっています。「役割」にがんじがらめになっている自分から解放され、そんな他者から自分を切り離して上から見ることができます。悪い言い方ですが、「期待通りの「役割」を疑いなく演じるなんて馬鹿なんじゃないの?「役割」から距離を置く俺(私)はそんな連中とは違って特別だ」と、その時は思えるのです。

                       

ただし、その時、そんな風に思えるだけです。「役割距離」の言動を表立って振る舞えるのは、大抵ある一定の年齢までという規範を適応した「相互行為秩序」が存在しています。目上の相手に逸脱した行動がとれるのは、精々学生の間までです。言い換えれば、自分に「子ども」という役割が期待されている間、あからさまな「役割距離」はある程度許容されています。この場合「役割距離」は「大人」にとって、「子ども」の役割の一つです。今は逸脱していても、いずれは逸脱してはいけないと学び、「役割」をちゃんと演じるようになるという期待が前提になっています。このような「相互行為秩序」のなかで、「大人」であるとみなされる年齢もしくは社会人となった人間があからさまに「役割距離」を実行すると、その社会的制裁は「子ども」の頃よりも厳しいものとなります。その意味で「役割距離」は、守るべきとみなされている規範や「相互行為秩序」のために存在しているともいえます。少なくともこのことを自覚した上で行動しないと、この「相互行為秩序」は揺らぎません。

また、この「役割距離」は誰でも日常的に行うものであるとゴフマンは捉えています。決して「他者とは異なる自分を証明してくれる」ものではありません。「大人」になると、「役割距離」は表面的な行為ではなく心理的な距離となり、行動に移すとしてもそれは「裏領域」に限られてきます。「面従背腹」という言葉があるように、上司に頭を下げていても内心舌を出しているという例は一般的でさえあります。表面上従っている上司や仲良くしている相手への悪口は、その人がいないときにその人以外の人間のなかで交わされるのが普通です。「役割距離」の態度を何らかの形で示す人よりも、何の戦略もなく、「私は上司を尊敬しています」「私はこの仕事に誇りを持っています」と言える人の方がレアケースでしょう。

言い換えれば、「役割距離」の態度は我々のコミュニケーションの前提となる典型的な「役割」であることが、人々の間で共有されているといえます。

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松岡 智文
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本ガイドは図書館学習サポーター/図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。

勤務期間 :2016年4月~2021年3月
当時の身分:大学院生(博士課程)
当時の所属:九州⼤学大学院地球社会統合科学府