◇MEMSとは
僕の卒業研究は「MEMS血流量センサ」という超小型な生体用センサに関する研究でした。
「MEMSって何だろう?」と思われる方がほとんどだと思うんですが、
MEMSを日本語に訳しますと「微小電気機械システム」とよく言われます。
一言でMEMS説明しますと、
小さな基板や構造物の中に、電気回路(電気的な部分)や
アクチュエータ(機械的な部分)などを含んだ微小な装置・システム
を指します (これで「ああ、あれか!」とはなりませんよね汗)。
MEMSセンサは、
「指先に乗ってしまうほど小さなセンサ」
のことだと認識して頂けると十分です。
そう言われても、あまり馴染みがないなあ、と思われるかもしれませんが、
実は生活の中にMEMSセンサは溢れているんです!
例えば、皆さんがお持ちのスマートフォンの中には
MEMS加速度センサというものが内蔵されています。
このセンサで端末の傾きを検知し、画面を縦から横、横から縦へと変更しているんです。
その他にMEMSセンサを内蔵しているものと言えば、自動車。
タイヤの空気圧をMEMS圧力センサで測定したり、
エアバックを膨らませる瞬間はMEMS加速度センサで検知したりしています。
MEMSは私たちの生活に欠かせない技術なんですね~。
◇卒論での研究テーマ
と、長くなりましたが、僕が研究したセンサもそういったMEMS技術を用いたものの一種。
こちらのセンサ、生体の皮膚表面にピッと貼り付けるだけで、その下の血流量が測定できます。
これを上手く使用すると、わざわざ息を吐かずに飲酒検知が行えたり、
夏場に気をつけたい脱水症状の検知が行えたりと非常に有用な可能性を秘めています。
ストレス状態も分かったりしちゃいます。
そんな魅力に溢れたセンサなのですが、きっと皆さんご存知じゃないですよね。
製品はいくつか販売されているんですが、あまり普及していないのが現状です。
どうして!?
既製品の血流量センサ(僕たちの研究室のものも含めて)は、ある重大な問題を抱えていました。
その問題を解決するのが、僕の研究の始まりでした。
さらに問題を解決した改良版センサで、実際に生体の血の流れを取ってみようじゃないか!
というところまでが僕の卒論でした。
◇卒論の内容・流れ
1.緒言(大雑把な研究背景)
「牛さんの健康管理って大切ですよね&世界は高齢化が進む一方ですよね」
2.研究背景(緒言をより詳しく)
「(緒言を踏まえて)血流量センサという役に立ちそうなセンサがあるんです!
けど、問題がありまして・・・・・・」
3.センサについて(血流量センサの構造や測定原理について詳しく)
4.センサの改良
「こうすれば血流量センサの問題を解決できたよー!」
5.実験 ウシでの血流量測定
「実際にウシでデータ取得してみたよ」
6.実験 ヒトでの血流量測定
「実際にヒトでデータ取得してみたよ」
7.結言(卒論のまとめ&今後の展望)
という感じです。
文字数は約22,000字, 約45ページほど。
ただ、これは個人によってバラバラで、研究室の同期は10,000字~15,000字くらいでした。
時期 | やったこと |
16年4月上旬 5月 6月
7月~8月
9月 10月~11月 12月
17年1月上旬
1月中旬
2月中旬 2月下旬 |
研究室配属先決定、研究テーマ決定 センサの改良をする(卒論の3の部分) ウシさんで実際に使用できるよう形状を工夫、データを取得
(卒論の5の部分、これで学会に2つ出す)
学会準備
(初めての学会で、とにかく時間がかかった。研究は一旦ストップ)
上旬に茨城で学会 納豆のから揚げを食す
下旬に韓国でワークショップ 本当に毎食キムチが出てきた
ヒトにも使えるようにセンサをさらに改良
加えてマイコンやプログラミングの勉強も(卒論の3の部分)
中間報告 この辺りから教授に過密な研究スケジュールで動かされる
センサを改良、年末ギリギリまで実験に追われる(卒論の6の部分)
先月のデータで国際会議に出せとのご指示。正月からパソコンを打つ
(恐ろしいことにまだ卒論には着手していない)
卒論を始める(同期もこの時期から)。
先輩曰く、例年と比べて書き始めが遅かったらしい。文献を10冊ほど読む。
泣きそうになりながら提出。次の日には東京に飛ぶという鬼っぷり
(研究室が展示会に出展。説明員として現地へ)
卒論諮問(教授陣の前で卒論の内容を発表。質問でボコボコにされる) |
完成までは大体上の流れで進んでいきました。
卒論は2月に提出するだけで終わり! ではなく、
提出前に中間報告(12月)、提出後に諮問(2月中旬)というものが控えています。
◇中間報告
中間報告は、それまでの研究成果をポスターにまとめて、他研究室の先生に見てもらい、
「ここはどういうことなの?」とか「ここは違うんじゃないの?」とありがたいお言葉を頂く報告会です。
研究をしっかりとしていれば、ポスター作りに手間取ることはないかと思いますが、
あんまり進んでいないと、書くことがなくてスッカスカ......ということもあり得ますのでご注意を。
「中間報告までに、卒論に必要な研究成果を出しておこう!」と予め計画を立てていると、
上手に研究が進められるのではないかと思います。
※報告会の時期は研究室によって異なりますので、要確認、です。
ちなみに、僕が作ったポスターはこんな感じです。
◇卒業諮問
お次は、卒論提出後に待ち受けている卒業諮問。
卒論で書いた内容をスライドにまとめて、先生方の前で発表します。
学部生か院生かによって、発表と質疑応答の時間は異なりますが
僕のところは、学部生は発表12分・質疑応答8分、院生は発表20分・質疑応答10分でした。
※こちらも研究室で異なりますので、要確認。
諮問はかなりきつかったです。笑
先生方の前で発表するだけでも体力を使うのに、その後の質疑応答も越えなければなりません。
僕は質問の内容を予想して臨んだのですが、先生の質問は大きく的を外れ......悲惨なことになりました。
修士の諮問では絶対に頑張ろう!見返してやる! と思いながら、今は毎日頑張っています。笑
また、当然と言えば当然なんですが、諮問で用いるスライドも作らなければなりません。
10分以上の発表にはそこそこの枚数が必要ですので、卒論提出後にバッとできるものでもありません。
卒論を書きつつ、パワポを開いてはちょくちょくスライドを作る......といった感じで進めていました。
以上が卒論に関わる大きな発表の場でした。
書くだけじゃ卒業できないんだ! ということを肝に銘じていてください。
◇研究以外にも......
しかーし! 研究室では、自分の研究だけに没頭できるわけではありません!
同期や先生の研究のお手伝い(電圧の測定や顕微鏡を使った測定など)もこなす必要があります。
上の表は、あくまで僕の研究に関係していることだけを書いています。
その裏には様々な雑務が......ゴホ、ゴホ。
なので、表を見て、することってあんまりないんだな、とは思わずにいてください。
意外と時間に余裕はありません......ああ休みたいぃぃぃ(学生の甘え)。
◇ポイント
もっと早く書き始めれば良かった! とずっと思っていました。
何とか形にこそなりましたが、執筆期間1ヵ月半はあまりにも短すぎます。
緒言や実験に関する部分は時間を見つけてコツコツと書いていた方が良いかもしれません。
特に緒言では統計データを集めたり、文献を調べたりする作業で案外時間を取られました。
僕の経験から言える卒論のポイントは、
①計画を立てて書く(当たり前のことのようですが、なかなかできない!)
②今自身が行っていることの意義や研究の筋道をきちんと理解しておく です。
①に関しては、研究室や周りの先輩に大体の卒論執筆期間を聞いて、
「僕・私だったらこのくらいかかりそうだな」と想像し、
「〇〇の部分は学会の内容と被ってるからあんまり時間は使わないとして、
◇◇はまだまとめたことがないから結構時間がかかりそうだな。
じゃあ今のうちに2週間くらいかけてある程度進めるとして・・・」
とスケジュールを立てていると、上手く2月に間に合うんじゃないかと思います。
いや、言われなくたって、スケジュールくらい立てるよ! とお思いになる方もいるかもしれませんが、
意外とスケジュール管理は難しいです。
ついついだらけてしまったり、思わぬ予定が入ってこんがらがったり......。
そういったサボり期間やイレギュラーなお仕事を見越して進めていると、
余裕を持って卒論が書くことができると思います。
僕が1月に入るまで卒論を書けなかったのも、1月の土日を全て捧げる破目になったのも、
スケジュール管理が上手くいっていなかったからに尽きます!
なので、ぜひ、早めはやめに計画を立ててみてください。
②今自身が行っていることの意義や研究の筋道をきちんと理解しておく
ですが、こちらはいつも研究室にいると、案外忘れがちなことです(僕は、ですが)。
当てずっぽうや何となくで実験や勉強を繰り返して、
卒論に「とりあえずやってみました」と書くわけにはいきません。
時には一旦立ち止まって、
「今、自分がしていることは、今後、~~の部分に関わってくるから必要なんだ」
「この実験結果からは~~ということが分かって、それが......の部分で役に立つんだ」
と現在自分のしていることを、きちんと理解することも大切だと思います。
この整理が出来ていると、卒論で研究背景や実験の目的を書く際に迷うことはありませんし、
思考停止モードで卒業研究を進めることも防げます。
こういった大切なことが自分自身で分かっていないと、
「僕・私、一体何やっているんだろう......」「これじゃあ先生の言いなりだ......」
研究の闇に陥ってしまいます。笑
ちょっと卒論のアドバイスから外れている気もしますが、
卒論にも研究にも活きるので、ぜひぜひたまには研究全体を俯瞰してみてください。
◇苦労したこと
僕は考察に最も悩まされました。
シミュレーションなど解析上のものでなく、実験の対象が生体でしたので、
どうしてこのような結果が出たのだろうか、とずっと頭の中で考えていました。
たまたま或る本に、「これだ!」という記述があったため、
ようやく自信をもって書けた、という感じでした。
もし過去に似た研究テーマがあったら、
先輩の卒論、修論にある考察は結構参考になりますので、
パラパラとめくってみるのも手かなと思います。 ※ただし、剽窃は絶対しないこと!