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ジャンヌ・ダルクへの学際的アプローチ : 「恋い」から「問い」への昇華法: ジェンダー論

世界史上の有名人の一人であるジャンヌ・ダルク(1412頃-1431)が、後世の文学・思想などに学際的な受容をされてきたことを紹介していきます。

ジャンヌ論の本流としてのジェンダー論

このページではジャンヌ・ダルクに関するジェンダー論を、論証例としての文献を挙げつつ紹介していきます。

生物学的には女性でありながら、当時の女性的な役割を越え、男性と同じ武装をして戦場に立ったこと。時代や地域によって聖女としても魔女としてもみなされてきた歴史。ここから、ジャンヌ・ダルクの「曖昧さ」に注目する本が多いことが見て取れます。

彼女についての数少ない史料や、錯綜する大量の言説を手掛かりに、ジャンヌ・ダルクという存在が如何なる点で現代に示唆的であるのかについて、以下の本ではそれぞれの観点から論じられています。

魔女狩りについて知りたい人には

以下の図書は、魔女や魔女狩りについての本です。残念ながらいずれも絶版です。

聖か魔か

1. 竹下節子『ジャンヌ・ダルク: 超異端の聖女』(講談社、2019年)

2019年現在、日本を代表するジャンヌ・ダルク評論家としては、パリ在住の竹下節子氏(1951年-)が挙げられるでしょう。キリスト教思想とそれに関連する文化史への造詣が深く、刊行された多数の日本語図書の中にはジャンヌとその関連分野について扱ったものも含まれています。

『ジャンヌ・ダルク: 超異端の聖女』では、ジャンヌ・ダルクが当時の女性観に照らし合わせると如何に特異な存在であったかについて、類似する同時代の女性と比較しながら論じられています。厳格なキリスト教社会の中で男装する女性は通例、宗教の定めた「正統」に違反する点で「異端」とされますが、啓示を受けてイングランド軍と戦うべく男装し、結果を残したジャンヌ・ダルクという存在は、当時の人々の理解を遥かに越えてしまうものでした。

2. 池上俊一『魔女と聖女: 中近世ヨーロッパの光と影』(筑摩書房、2015年)

2019年時点の日本における中世ヨーロッパ史研究の第一人者と言える池上俊一氏(1956年-)が提示するのは、高校世界史で習う政治史をはじめとする「表のヨーロッパ史」の裏にある、「魔女」や「聖女」にまつわる史実です。これを見ると、星野桂氏の漫画『D.Gray-man』の世界観のように神秘的でオカルティックであり、まさかこれは現実ではないと感じる読者も多いでしょう。しかし、このようなフィクションじみた人々が織りなした「もう一つのヨーロッパ史」があったことはもはや確かな事実です。

男か女か、また別か

竹下節子『戦士ジャンヌ・ダルクの炎上と復活』(白水社、2013年)

上のボックスで挙げた竹下節子氏は、ジャンヌに関して『戦士ジャンヌ・ダルクの炎上と復活』も著しています。同書では、ジャンヌ・ダルクの逸話が近現代フランスでどのように受容されてきたのかについて多面的に紹介されています。また、ジャンヌがアンドロギュノス(両性具有)的要素を持つ人間であることが、トランスジェンダーであったとされる歴史上の他の人物と比較しながら検討されています。