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ジャンヌ・ダルクへの学際的アプローチ : 「恋い」から「問い」への昇華法: はじめに

世界史上の有名人の一人であるジャンヌ・ダルク(1412頃-1431)が、後世の文学・思想などに学際的な受容をされてきたことを紹介していきます。

自己紹介

ようこそCute.Guidesへ。人文学徒の古川琢磨と申します。2017年4月から九大図書館に勤めています。

大学院修士課程では人文科学府英語学・英文学専修に所属し、アメリカの小説家マーク・トウェイン(1835-1910年)がジャンヌ・ダルク(1412頃-1431年)をはじめとする中世ヨーロッパの歴史・文化をどのようにして自身の作品へと取り込んでいったのかについて考えていました。

高校時代以来ジャンヌ・ダルクを中心とする世界史や文芸創作に関心を持ち続けていた結果、ジャンヌがフランス国外の諸文化でどのように受容されてきたのかを含めて修士論文の中で考えようとするまでに至りました。

まさに「好きなものが研究対象になった」例そのものです。

はじめに: 読者へのメッセージ

“Joan of Arc at the Coronation of Charles VII in Reims Cathedral” [Credit: Archivo Iconografico, S.A./Corbis]

図1 ドミニク・アングル『シャルル7世戴冠式のジャンヌ・ダルク』(1854年)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ingres_coronation_charles_vii.jpg, 2021/3/1

ジャンヌ・ダルク(Jeanne d'Arc)と聞いて、皆さんは何を思い浮かべますか?

高校世界史の教科書や歴史学習漫画に載っていた、インパクトの強い歴史上の人物?

古今東西で「○○のジャンヌ・ダルク」と呼ばれる、社会的困難に対して闘う女性の象徴?

国内外の文学やゲームに出てくる人気キャラクター?

あるいは、ビジュアルバンドのJanne Da Arc?

地域も時代も遠く離れたフランスの一少女の足跡と伝説が、これほどまでに日本の歴史教育や文化シーンの中で存在感を放っていることに改めて驚かされます。

とはいえ、そもそもジャンヌ・ダルクとは何者か、あるいは彼女のイメージがどのような形で後世に受け入れられてきたのかと問われると、うまく答えられないという人もいることでしょう。

このガイドでは、ジャンヌ・ダルクの生涯に加えて、その死後の後世の受容について紹介します。特に「文学」「視覚芸術」「ジェンダー論」に関しては、それぞれ1ページを割いて扱っています。各ページには関連する図書の情報も掲示し、その多くは九大図書館で読めます。

一人の歴史上の人物について学問的に考えてみると、意外と多くの分野からのアプローチが出来るものです。

ジャンヌ・ダルクその人に興味がある人には勿論有益な内容を含んでいると自負していますが、レポートや卒論・ゼミ論において自分の着眼点を設定する力を磨きたい学生にとっての問題設定サンプルを提供することもこのガイドでは企図しています。

何となく「好き」なものを研究対象にまで高めるというのはこういうことです。