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狩野亨吉と九州大学: 書誌・書目類

近代日本を代表する思想家・教育家・蒐書家である狩野亨吉が、九州大学にもたらした貴重な図書の紹介

狩野文庫書誌・書目類

 中央図書館に所蔵される狩野文庫の書誌・書目類は、大学本部が狩野亨吉から購入したもので、総計85部309冊を数える。創設されたばかりの法文学部、附属図書館に移管され、その基盤の一つとなった。昭和3年(1928)3月の九州帝国大学創立記念日、 法文学部開学式の展示会「図書館学参考書展覧会」 (附属図書館初の展示会)では狩野文庫本が主な展示品として多数出品されている。

天学初函大意書―禁書の調査報告―

   


向井兼美著『天学初函大意書  中央図書館所蔵 010/テ/7 ※電子画像はタイトルをクリック

 明・李之藻『天学初函』(1629年)西洋の宗教や科学に関する書物を集めたもので、キリスト教関係の書物を含んでいたため、江戸時代では禁書として輸入が禁止されていた。本書は、明和8年(1771)に長崎に入港した「卯九番唐船」が運んできた書物の中から発見された『天学初函』を、書物改役の向井兼美が取り調べた報告書(大意書)の写本である。大意書は書物改役が内容を吟味した上で長崎奉行に提出される報告書であるから、書籍解題の性格も持っていた。鎖国・禁教下の日本人が、西洋の宗教や科学をどのように捉えていたかを知るうえで貴重な資料である。『国書総目録』によれば、他に所蔵が確認されるのは、東北大学狩野文庫のみである。

参考文献:大庭脩『江戸時代における唐船持渡書の研究』(関西大学東西学術研究所、1967年)、柴田篤「『天学初函大意書』における『畸人十篇』」(『哲学年報』74、2015)

参考:熊本県立大学文学部平岡研究室制作「長崎聖堂の世界」第4章 書物改(2016.7公開)