勢至 文殊 |
腎膀胱虫 胃腑虫 好婬虫 |
小腸虫 大腸虫 |
胆腑虫 寸白虫 [門+由]大虫*1*2 |
陰好虫 針穴虫 背腸虫 針狂虫 |
好食虫 独孤虫 |
積衆虫 産後虫 女之白血見虫 |
五臓六腑砕之次第之明鏡 |
『五臟之守護并虫之図』 医学図書館所蔵 コ-25 眼科/和書7245号 ※電子画像はタイトルをクリック
※1 [門+由]大虫(ちんだいちゅう)は、医学図書館参考調査係員の解読による(2024.5.29修正)
※2 長野仁「『五臟之守護并虫之図』 について」は「閻大虫」とする
人間ははるか昔から、自身や身近な動物で目にする幾つかの虫について認識し、想像上の虫を病因としたりしていた。本書は九州国立博物館所蔵『針聞書』と同じく、大変ユニ-クな虫を描いた江戸期の写本。「五臟之守護并虫之図」4葉半と「五臓六腑砕之次第之明鏡」6葉半の2部で構成されている。前半は五臓に宿る五仏と体内に巣くう18種の虫が列挙され、後半は内景図とその解説が記されている。
参考文献:ミヒェル・ヴォルフガング解説「蟲」(『東西の古医書に見られる病と治療-附属図書館の貴重書コレクションより』)、長野仁「『五臟之守護并虫之図』 について」(『鍼灸』OSAKA24(3)、2008)
明・哀学淵撰『新刻秘伝眼科七十二証全書』 明刊 医学図書館所蔵 ヒ-47 眼科/和書7104-7105号
中国明時代に哀学淵が著した中国眼科専門書で、17世紀後半に日本で翻刻され、日本の眼科諸流派の教科書となった。本書は貴重な明刊本(補写あり)。図の五輪とは、眼の各部位を、脾心肺肝腎の五臓と、木火土金水の五行と関連づける考え方で、五臓六腑における五行運行状態に異常があると、眼の五輪にも異常が発生すると考えられていた。
本書は丹波園部出身の漢方医寺尾元長(号柳外園、1800~1847)の旧蔵書の一つ。寺尾元長の蔵書は散逸して、各地の図書館に「柳外園蔵書印」が押印された図書を見出すことができるが、九州大学に最もまとまって所蔵されている。明刊本をはじめとする貴重な漢籍古医書を数多く含み、医学図書館におけるその中核となっている。
参考文献:千葉彌幸「江戸時代の眼科小史」(『千葉医学雑誌』78-6、2002)、「秘傳眼科全書」(『研医会通信』122、2015)
『馬島眼療之図』 文政13年(1830)写 医学図書館所蔵 マ-5 眼科/和書7373号 ※電子画像はタイトルをクリック
江戸時代の眼科の名門馬島流の秘伝書の写本。馬島流は尾張海東郡馬島の医王山薬師寺の僧で、同寺中興の祖といわれる清眼僧都(?~1379)を開祖とする。以降馬島流は多くの流派によって継承され、近代に至るまで隆盛を極めた。
馬島流の技術は口伝や秘伝書によって継承され、本書もそうした秘伝書の一つである。眼病の薬種とその功能および治療法を眼病図入で解説している。
参考文献:谷原秀信「日本で最初の眼科専門医 : 馬島清眼と馬島流について」(『眼科』55(9)、2013)、「麻嶋灌頂小鏡之巻」(『研医会通信』21、2008)
杉田玄白・大槻玄沢訳『重訂解体新書銅版全図』 天保14 (1843)刊 医学図書館所蔵 カ-31 眼科/和書3617号 ※電子画像はタイトルをクリック
『重訂解体新書』は、安永3年(1774)に刊行した『解体新書』の訳に満足しなかった杉田玄白(1733~1817)の命で大槻玄沢(1757~1827)がクルムスの『解剖図表』(ターヘル・アナトミア)を訳しなおしたもの。銅版図は、中伊三郎(?~1860、大坂の蘭学者中天游の従弟)の作で、木版に比べはるかに精密になっている。
本書には「狩野氏圖書記」の蔵書印が捺されており、眼科教室の狩野本発見のきっかけの一つとなった。
参考文献:ミヒェル・ヴォルフガング解説「東へ伝わる西洋医学」『東西の古医書に見られる身体』、『解体新書とターヘル・アナトミア : 解剖図の洋風表現』(武田科学振興財団杏雨書屋、2012)
参考:慶應義塾大学所蔵オランダ語版『ターヘル・アナトミア』