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神経機能を支えるミクログリアとは?: ミクログリアの機能

(研究者の間で)最近話題のミクログリアについて、その機能や病気との関係、またミクログリア研究を紹介します。

ミクログリアの機能① 液性因子の放出

ミクログリアはサイトカインなどの液性因子を産生・放出しています。

ミクログリアが産生・放出する液性因子として、

TNF-α ・ IL-1β ・ IL-6  などの 炎症性サイトカイン

TGF-β ・ IL-10  などの 抗炎症性サイトカイン

ケモカイン

BDNF

活性酸素

一酸化窒素

などが挙げられます。いくつか見てみましょう。

 

炎症性サイトカイン

ミクログリアの放出する炎症性サイトカインは、脳内の炎症反応を制御しています。

ストレスや感染などで脳がダメージを受けると、ミクログリアは活性化し、TNF-αやIL−6などの炎症性サイトカインを放出、炎症反応を引き起こします。

炎症反応は、多発性硬化症、脳卒中、アルツハイマー病などの神経疾患や、うつ病、統合失調症、自閉症などの精神疾患を悪化させると考えられています。

 

BDNF (Brain Derived Neurotrophic Factor、脳由来神経栄養因子)

BDNFは、神経細胞の生存や成長を促進するサイトカインです。

BDNFを放出することができなくなったミクログリアを持つマウスは、シナプスの維持・機能に重要なタンパク質の発現量の低下や、シナプス可塑性の低下、また学習能力・記憶能力が低下することが報告されており、

ミクログリアが放出するBDNFは、脳の機能に重要な役割を持つと考えられています。

ミクログリアの機能② 貪食

ミクログリアはマクロファージ同様、貪食作用を持ちます。

そのため脳の中で死んだ細胞や、デブリ(debris、ダメージを受けた細胞の “破片” などのこと)、またアルツハイマー病で蓄積するアミロイドβタンパク質など、不要なものを貪食して取り除いています。

また、ミクログリアはMHCクラスⅡ分子を発現します。そのため、貪食により取り込んだ一部を抗原として提示 (抗原提示)し、免疫反応を活性化させることができます。

 

 

ミクログリアの貪食反応について、もうちょっと詳しく勉強してみましょう。

ミクログリアは、どのようにして生きている細胞と死んだ細胞を見分け、貪食するのでしょうか?

 

損傷を受けたり、寿命の尽きた神経細胞は、細胞外に大量のATPを放出します(下図 (A) )。

通常細胞外にはATPはほとんど存在しないため、このATPが損傷を受けた神経細胞が存在するサインになっています。

そのためこのATPは “Find me signal (私を見つけて信号)" と呼ばれます。

ミクログリアはこのATPを感知して、ATPの濃度が高いほう、つまり損傷を受けた神経細胞のほうへと向かって移動します。

移動したミクログリアはサイトカインを放出して炎症反応を引き起こしたり、BDNFを放出して神経細胞を保護するのを助けたりします。

 

 

一方、すでに神経細胞のダメージが大きすぎて助けられないとき(泣)、このような状態の神経細胞はUDPも放出します(下図 (B) )

ミクログリアがこのUDPを感知すると、アメーバ状に変化し貪食する準備を始めます。

損傷の激しい神経細胞は細胞膜の構造が壊れるので、通常膜構造のなかで整列しているホスファチジルコリンが露出します(下図 (C) )

ミクログリアはこの露出したホスファチジルコリンを目安にして貪食を始めます。こうして、損傷の大きい細胞のみを貪食し、そうでもない細胞は貪食しないようにしています。

ホスファチジルコリンは “Eat me signal (私を食べて信号)" と呼ばれます。

 

ミクログリアの機能③ シナプス刈り込み

シナプス刈り込みとは、不要なシナプスを消去することで、残ったシナプスを必要なシナプスとして神経の伝達を強める現象のことです。

シナプス刈り込みは脳の発生の段階において特に盛んです。

神経細胞は最初にとりあえず過剰にシナプスを形成しておき、必要なシナプスだけを生存させ、不要なシナプスを消去することで、機能的に成熟な神経回路を形成していきます。

 

 

シナプス刈り込みの例として、外側膝状体におけるミクログリアの活動がよく知られているので紹介します。

網膜からの神経細胞(網膜神経節細胞)は、脳の外側膝状体(左右2対あります)という領域に細胞の突起を伸ばしています。

外側膝状態では、左側の眼球から入力を受けている領域と、右側の眼球から入力を受けている領域で、きれいに領域が分かれています。

実は発達の段階では、この領域の区別は存在せず、左側からの入力と右側からの入力がばらばらに存在しています。

ミクログリアは、左側もしくは右側から入力されているシナプスの刈り込みをしていくことで、領域が区別されます(眼特異的軸索分離、といわれます。カッコいい!)。


【おまけ②】ラミファイド型ミクログリアの形態は...

前のページにて、通常状態のミクログリア(ラミファイド型ミクログリア)は、細長い突起を四方八方に伸ばしていることを示しました。しかしなぜこんな形をしているのでしょう?
 
ラミファイド型ミクログリアは細長い突起をゆらゆらと動かしながら、脳内に異常がないかをパトロールしています。Find me signal であるATPを効率良く検知するためには、このような構造がベストなのです。

さらに近年、細長い突起が頻繁にシナプスに接触していることがわかりました。このシナプスへの接触は、シナプスの機能を監視し、シナプス刈り込みに関与していると考えられています。

生物の形には意味があるのです!

 

 

次のページでは、ミクログリアと病気との関係について説明します。

論文紹介

ここでは、興味を持ったかた向けに、このページの内容と関係するオススメ論文を紹介します。


 

Koizumi S, Shigemoto-Mogami Y, Nasu-Tada K, Shinozaki Y, Ohsawa K, Tsuda M, Joshi BV, Jacobson KA, Kohsaka S, Inoue K.

UDP acting at P2Y6 receptors is a mediator of microglial phagocytosis.

Nature. 2007; 446(7139): 1091-1095.

[PMID: 17410128]

[DOI: 10.1038/nature05704]

 

ミクログリアによる貪食が活性化されるメカニズムを解明した論文です。

ミクログリアに発現するP2Y6という受容体が、UDPを検知し、貪食を活性化することを明らかにしました。

 


 

Paolicelli RC, Bolasco G, Pagani F, Maggi L, Scianni M, Panzanelli P, Giustetto M, Ferreira TA, Guiducci E, Dumas L, Ragozzino D, Gross CT.

Synaptic pruning by microglia is necessary for normal brain development.

Science. 2011; 333(6048): 1456-1458.

[PMID: 21778362]

[DOI: 10.1126/science.1202529]

 

脳の発達期において、ミクログリアがシナプス刈り込みを行っていることを示した論文です。

発達期にミクログリアによるシナプス刈り込みが行われないと、未熟なシナプスが残り、機能的に成熟な神経回路が形成されないことを明らかにしました。

 


 

Schafer DP, Lehrman EK, Kautzman AG, Koyama R, Mardinly AR, Yamasaki R, Ransohoff RM, Greenberg ME, Barres BA, Stevens B.

Microglia sculpt postnatal neural circuits in an activity and complement-dependent manner.

Neuron. 2012; 74(4): 691-705.

[PMID: 22632727]

[DOI: 10.1016/j.neuron.2012.03.026]

 

ミクログリアによる眼特異的軸索分離のメカニズムを解明した論文です。

ミクログリアがシナプス刈り込みを行うシナプスは、シナプスの入力が弱まり、補体の「C3」という分子がシナプスに付着します。これを目印にして、ミクログリアはシナプス刈り込みを行っていることを明らかにしました。