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神経機能を支えるミクログリアとは?: ミクログリア研究を紹介!

(研究者の間で)最近話題のミクログリアについて、その機能や病気との関係、またミクログリア研究を紹介します。

ミクログリアはシナプス形成を誘導する

Miyamoto A, Wake H, Ishikawa AW, Eto K, Shibata K, Murakoshi H, Koizumi S, Moorhouse AJ, Yoshimura Y, Nabekura J.

Microglia contact induces synapse formation in developing somatosensory cortex.

Nat Commun. 2016

[PMID: 27558646]

[DOI: 10.1038/ncomms12540]

 
生理学研究所によるプレスリリースはこちらhttp://www.nips.ac.jp/release/2016/08/post_325.html
 

 

このごろの顕微鏡の技術の発達はすごいものです。例えば二光子顕微鏡という顕微鏡は、より深部まで光を届けることが可能で、マウスの脳では表面から1mm程度の深さまで観察することができます(これはヒトでいうと、表面から3cmくらいの深さの構造を見ていることに相当するそうです!)。二光子顕微鏡を使うと生きたマウスの脳の、より内部の構造を観察することが可能です

 

近年、二光子顕微鏡を用いてマウスの脳を観察した研究から、ラミファイド型ミクログリアの突起が頻繁にシナプスに接触していることが明らかになりました。

ミクログリアはシナプスの機能を監視する役割を持っており、シナプス刈り込みなど、神経回路の編成に関わっていることが考えられています。

 


 

この論文では、著者らは二光子顕微鏡を用いて、発達期(生まれて8~10日)のマウスの脳内のミクログリアを観察しました。

すると、ミクログリアが神経細胞の突起に接触すると「フィロポディア」と呼ばれる、将来新たなシナプスの元になる構造が形成され、その後実際にシナプスへ成長していくことが確認されました。

また、発達期においてミクログリアを取り除いたマウスや、ミクログリアの働きを低下させることが知られている薬剤を投与されたマウスは、シナプスの数が減少することを確認しました。

さらに、発達期においてミクログリアを取り除いたマウスは、成熟後も神経細胞間の情報伝達量が減少したままでした。

 

以上より、

ミクログリアは発達期においてシナプス形成を制御しており、神経回路の発達や成熟後の機能に影響を与えている

ことが明らかになりました。

 

統合失調症や自閉症の脳では、シナプスの数の減少や、シナプスの機能の低下・異常が起きていることが知られています。神経回路形成におけるミクログリアの機能の研究を進めることで、これらの病気の治療や予防につながることが期待されます。

うつ状態におけるミクログリアの形態変化

Kreisel T, Frank MG, Licht T, Reshef R, Ben-Menachem-Zidon O, Baratta MV, Maier SF, Yirmiya R.

Dynamic microglial alterations underlie stress-induced depressive-like behavior and suppressed neurogenesis.

Mol Psychiatry. 2014; 19(6): 699-709.

[PMID: 24342992]

[DOI: 10.1038/mp.2013.155]

 


 

うつ病は、抑うつ気分、興味・意欲・活動性の低下などを特徴とする精神疾患です。

うつ病の治療は難しいものですが、特に「治療抵抗性うつ病」とよばれ既存の抗うつ薬が効かないことがあり、問題になっています。

近年、治療抵抗性うつ病には脳の炎症状態が大きく関わっている、という報告があり、うつ病におけるミクログリアの状態にも注目が集まってきています。

 


 

この論文では、著者らはマウスにストレスを負荷し「うつ状態」に陥ったマウスのミクログリアを観察しました。

マウスへのストレスの負荷が数日間のとき、ミクログリアは増殖して活性化していることが確認されました。

一方ストレス負荷が続くと、ミクログリア自身がアポトーシスを起こしてミクログリアの数が減少し、機能が低下することが分かりました。

 
以上より、

うつ状態時におけるミクログリアは、「増殖し活性化している状態」と「数が減少し機能が低下している状態」の

反する状態を示すことが分かり、それぞれの状態に合わせた治療を進める必要がある

可能性が示唆されました。

 

 


おわりに&参考文献