ジャン=ポール・サルトルは20世紀を代表するフランスの哲学者です。
小説や戯曲も書いており、世界中の文学者に影響を与えました。
そして、積極的に社会参加(アンガージュマン)をする知識人としても知られています。
サルトルの思想は「実存主義」として知られています。
その「実存主義」とは何なのでしょうか?
サルトルの哲学は「実存主義」(existentialism)と呼ばれています。
それでは、「実存主義」の「実存」(existence)とは何なのでしょうか。
実存の対義語のことを「本質」と言います。
本質とは、自分が「~である」ということを意味します。
つまり、「男性である」とか「女性である」、「黒人である」、「ユダヤ人である」、「労働者である」、「学生である」というように、自分が社会のなかでどのように「見られているか」ということを表わします。
そのような「本質」は私たちに「男らしさ」や「女らしさ」といったものを押し付けることで、私たちの「自由」を奪おうとします。
あるいは「日本人である」とか「アメリカ人である」といった国籍にかかわる本質はナショナリズムの装置であるとも言えます。
このような「本質」に対抗して、「何者でもないこの私」として提示されたのが「実存」です。
自分自身の「自由」を直視することで、本質という役割からはみ出して生きること。
これが実存主義です。
第二次世界大戦後の学生運動で流行した実存主義は、国家権力に抵抗する思想として広まります。
それは資本制における「職業主体」や国家における「国民」といった本質に抵抗するためのアナーキーな哲学なのです。