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どうやって検査されてるの?: 血液検査

日頃めったに覗くことのできない病院の検査室で「どうやって検査されているか?」を少しだけご紹介したいと思います☆

血液検査

血液検査って・・・血液検体を検査しているんだから,全部血液検査ではないの?

と思うかもしれませんが,ここで言う血液検査とは,血液に含まれる細胞の検査 のことです.

血液に含まれる細胞には主に赤血球,白血球,血小板 があります.

血液検査では主にこれらの数,形,割合を調べます.

 

血液に(主に!) 含まれる細胞たち MG染色

東海大学医学部基礎医学系 組織学 デジタル標本箱より引用

左から順に,好中球,好塩基球,好酸球,リンパ球,単球,血小板(赤の矢印)で,各細胞の周りにたくさんある赤い細胞が赤血球です.

実はこのうちの5種類(好中球,好塩基球,好酸球,リンパ球,単球)は全て白血球です.

太郎さんの検査結果に白血球分類という項目がありましたが,これは全部の白血球の中にこれらの細胞がどのような割合で含まれているかを検査しているのです.

種類が違うということは役割も違います.

以下に各血液細胞の役割について簡単に示します.

健康なときにはこれらの値が一定に保たれています.

風邪やインフルエンザなどで体調を崩した時,これらの細胞が自らの任務を遂行するために都合のいい割合に変化します.

 

血球を数える

赤血球は1 μL(1 μLは1 mLの 1/1,000量)中に約500万個,白血球は約5000個含まれます.

これだけ多くの細胞を顕微鏡で数えていたら何人もの患者のデータを報告することはできません(場合によっては顕微鏡で数えることもありますが・・・).

そこで利用されるのが自動血球分析装置で,この装置を使うことによって血液検査の多くの項目の結果を報告することができます.

電気抵抗式血球計数機の測定原理

他にも測定原理がありますが,ここでは使用されている頻度の高い電気抵抗式の例を挙げています.

簡単に説明すると,採血管から吸い上げた血球を薬品に混ぜ,血球浮遊液とした後,アパーチャを血球が通る時の電気抵抗の大きさで測定をする,ということです.

電気抵抗の大きさは血球パルスとして表され,パルスの数が血球数と,大きさが血球容積と比例します.

血球の大きさは,血小板<<赤血球<白血球であり,血小板は赤血球,白血球に比べて十分に小さいことが分かります(だいたい血小板:2~10 fL,赤血球:80~110 fL,白血球:60~fL,※fLは血球の容積を表す単位)

→ 容積での分類が可能

血球の数は,白血球<<血小板<赤血球であり,白血球は血小板,赤血球に比べて十分に少ないことが分かります(だいだい白血球:7000 /μL,血小板:20万/ μL,赤血球:400万/ μL)

→ 白血球数は無視できる ※あくまでも血液疾患でない場合

以上の理論より血球数を求めます。

赤血球,血小板数:容積により分類,測定(赤血球は一部白血球の数まで測り込んでいる)

白血球数:検体に含まれる赤血球を溶血剤で処理後,測定

ヘモグロビン濃度(Hb):白血球数測定のために溶血剤で処理した溶液を分光光度計を用いて測定

ヘマトクリット値(Ht):直接測定せず,まず正確な赤血球のヒストグラムを測定し,血球容積に赤血球数を乗じて全容積を算出したのち,全赤血球数で除して平均赤血球容積(MCV)を算出する.ヘマトクリット値は次式で算出する.

ヘマトクリット値(%)= MCV (fL)× RBC (×10^6/μL)/10

ヘマトクリット値に関しては少し難しいかもしれませんが,直接測定していないことくらいは知っておいてください.

 

白血球を分類する

先にも述べたように白血球は5種類もあるので,病気のときにはその割合分布を調べる必要があります.

分類の方法として最も単純なのは顕微鏡による目視確認ですが,時間と手間がかかります.

そこで登場するのが先ほどから紹介している自動血球分析装置です!

以下に自動血球分析装置による白血球分類の原理を示しています.

                                                                                    

写真提供:シスメックス株式会社

前方散乱光(FSC)・・・細胞の大きさの情報を読み取る,細胞が大きくなるほど信号が大きくなる

側方散乱光(SSC)・・・細胞の内部情報を読み取る,内部構造が複雑になるほど信号が大きくなる

側方蛍光(SFL)・・・核酸や細胞小器官の種類と多寡を反映

これら3つの信号からデジタル信号やアルゴリズムを駆使して,細胞の分類やカウントを行っています.

右側の図には,この原理を用いて分類した白血球のスキャッタグラムを示しています.

LYMPH=リンパ球,MONO=単球,NEUT=好中球,BASO=好塩基球,EO=好酸球です.

このようにして白血球は分類されています.

正常な状態ではスキャッタグラムは同じようなパターンをとりますが,何か異常がある場合,パターンに変化が現れます.

なぜなら,先ほど説明したように病気になると白血球の数,割合が変わったり,場合によっては普段見られない細胞が出現したりするからです.

そんなときは・・・やっと人間の出番です!

 

白血球分類(目視)

スライドガラスに血液を薄くのばし,染色したものを顕微鏡を使って観察し,血液細胞をカウント,分類する方法です.

顕微鏡で観察する血球は最初に載せた画像のように見えます.

血球の大きさ,形,成熟度合いや存在する割合などに異常はないか,観察します.

血球は100あるいは200個数え,パーセンテージで報告します.

白血病の患者がこの目視によって見つかったりするので,責任重大です!

血球の検査をしている装置はすごい技術を使っているんだな・・・

と思いつつ,太郎さんは次に尿検査をしている場所に移動しました.