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どうやって検査されてるの?: 尿検査

日頃めったに覗くことのできない病院の検査室で「どうやって検査されているか?」を少しだけご紹介したいと思います☆

尿検査

尿検査はもしかするとみなさんにとって一番身近な検査かもしれません.

毎年一度,健康診断のときに尿を提出しますよね.

みなさんの健康診断では尿糖と尿タンパクしか調べないと思いますが,実はそれ以外にも様々な項目を尿から検査できるのです.

採血みたいに,採取に痛みを感じる事がないので,スクリーニング検査(病気が無いかどうかを探す検査)には非常に適した検査だと言えます.

 

 

尿定性検査

尿定性検査・・・と言われると難しく聞こえるかもしれませんが,実はこの検査こそがみなさんのなじみのある,いわゆる”尿検査”です.

テストテープのろ紙が着いている部分を尿に浸し,一定時間の後に色の変化によって各項目がどの程度尿に含まれているかを判定します.

これは定性検査(性質を調べる検査)なので,詳細な数値ではなく、項目の量を−〜+++で報告します.

上の例において,白血球の項目が一番右端のピンク色に近い色になった場合は白血球+++で,もし色の変化がなければその尿中には白血球がほとんど含まれておらず、−という結果を報告します.

このテストテープ,ただカラフルなろ紙が付いているだけのように見えますが,実はたくさんの化学反応が起こる場になっているのです!

上の表に尿試験紙法の項目と反応原理について記載しています.

全ての項目に付いて原理を細かく説明すると膨大な情報量になるので,ここでは省略します.

たくさんの反応が同時に起こるからこそきちんと検査されないと間違った結果を報告してしまう可能性があることは覚えておいて下さい!

尿検査ではもう少し詳しく尿中に出ている物質を検査する方法があります.

それが尿沈渣検査で,顕微鏡を使って観察する事によって試験紙法よりも詳しい情報を得る事ができます.

 

 

尿沈渣検査

①尿コップの中の尿を良く混和し,尿沈渣専用スピッツに分注する

②スウィング型遠心器で500g・5分間遠心する

③②で得られた上清をデカンテーションあるいはアスピレーターを用い取り除き,残渣量が0.2 mLとなるようにする

④ピペットを用い残渣をよく混和し,スライドグラスに15 μL載せる

⑤18×18 mmのカバーガラスを真上からスライドグラスに平行になるようにかぶせる

⑥全視野を弱拡大(low power field; LPF 100倍)で観察し,標本内の有形成分が均等に分布している事を確認し,強拡大(high power field; HPF 400倍)で20〜30視野を鏡検する.

 

下に示したのが尿沈渣検査で見られる細胞の例です.

臨床的な意義を簡単に示します.

<血球類>

赤血球:腎・尿路系からの出血を示唆するきわめて重要な成分.

白血球:腎・尿路系における感染症の早期診断に有力な手がかりとなる重要な成分.

 

<上皮細胞>

尿細管上皮細胞:進行した腎実質性疾患で高率に出現.

尿路上皮(移行上皮)細胞:腎尿路系の炎症性病変,結石,機械的採取などで多数の尿路上皮が尿中に出現する.

扁平上皮細胞:尿道炎,カテーテル挿入,前立腺がんのエストロゲン療法などで出現することがある.

 

 

<円柱類>

各種円柱は尿流圧の減少,浸透圧の上昇,アルブミン濃度の上昇,pHの低下により,遠位尿細管から下部の尿細管で分泌されるTamm-Horsfallムコ蛋白とアルブミンが尿細管内ゲル化して鋳造された成分である.その中に含まれている成分によりいろいろな種類に分けられる.

硝子円柱:各種円柱の基質部分を構成する.健常者でも少しは見られるが腎実質疾患や全身的な腎血流量の低下などで見られる.

顆粒円柱:基質内に大小の顆粒を1/3以上含む円柱.顆粒成分の由来の多くは尿細管上皮細胞の破壊と変性が進行したものである.顆粒円柱の出現は腎実質障害が考えられる.

上皮円柱:基質内に尿細管上皮細胞を3個以上含む円柱.尿細管上皮細胞が変性壊死に陥り,剥離し,円柱内に封入されることは,腎血流量の低下による虚血状態や薬剤などの腎毒性物質による尿細管障害を示唆する.

ろう様円柱:基質内にろうを溶かし流し固めたような不透明,均質な円柱であり,長時間の尿細管閉塞を意味する.ネフローゼ症候群,腎不全,腎炎末期などの重篤な腎疾患に見られるため,臨床的意義が大きい.

                                                              

ここに挙げた以外にも,尿中にはたくさんのものが出現しますので,尿沈渣をきちんと見られるようになるにはたくさん観察し,経験値を上げる事が重要です!

 

ただ浸けて見るだけだと思っていたけど,尿検査ってたくさんの化学反応で成り立っているんだな.

そう思いながら太郎さんは血液型検査をしているところへ移動しました.