歯科治療でレーザーを使うことが増えてきています。
レーザーでやれば痛みがないなんて巷では書いてありますが、全く痛みがないっていうのは、正直言い過ぎです。
ただ、痛みは通常の他の治療法より抑えられることが多いといったところでしょうか。
実際は患者さんの感想としては、「麻酔するほどじゃない」くらいの痛みだったりします。
具体的な臨床応用には、
虫歯を探す、削る 歯茎の中に入っている歯石をとる
口内炎の痛みを和らげる 親知らずにかぶさっている歯肉を一部切除する
ホワイトニングに利用する 神経の治療に利用する
インプラントに伴う、症状を緩和する
などなどです。もっと広い範囲に利用幅が広がっていきそうです。
歯科治療で使用するレーザーには大きくわけて4種類あります。
組織透過型
Nd:YAGレーザー 半導体レーザー
粘膜などの柔らかい組織の切除 粘膜などの柔らかい組織の切除 齲蝕の診査
組織表面吸収型
CO2レーザー Er:YAGレーザー
粘膜などの柔らかい組織の切除 粘膜などの柔らかい組織の切除 歯の硬い組織の切除や歯石の除去
(唯一虫歯を削ることができるレーザーです。)
色々あるレーザーの中から、私が研究しているEr:YAGレーザーについて語ります。
このレーザーは、
中赤外線領域にある波長2.94μmのレーザー 水とハイドロキシアパタイトに対する吸収特性が極めて高い。
熱による影響は深部まで伝わりにくい。 硬組織の切削が可能な唯一のレーザー
という特徴があります。
ちなみに、レーザーの名前であるEr:YAG(エルビウムヤグ)というのは、一体何なのでしょうか?
具体的に言いますと、以下のようになります。
エルビウム(Erbium)
イットリウム(Yittrium)
アルミニウム (Alminium)
ガーネット(Garnet)
イットリウムとアルミニウムの複合酸化物からなるガーネット構造の結晶に、エルビウムを添加したものです。これを媒体としてレーザーを発振しています。
画像出典:Wikipedia エルビウム、イットリウム、アルミニウム、ガーネットより。
それがなんだって話ですが、上の長所を紐解いていきますと、
水とハイドロキシアパタイトに吸収特性が高いということは、
水やハイドロキシアパタイトにレーザーがあたるとそこで吸収されやすい→反応を起こしやすい ということになります。
歯は、ハイドロキシアパタイト結晶とその結晶同士をつなぐ水和殻という水分で主に成り立っています。
レーザーを歯にあてると、レーザーによる熱で水(水和殻)が蒸発し、つないでいたものが蒸発してなくなりますから、ハイドロキシアパタイトはバラバラになってしまいますね。
このことから、歯を削ることができるというイメージにつながっていますかね?
もうひとつ考えられている説もありまして、
レーザーの光エネルギーがハイドロキシアパタイトに吸収されることで、組織の蒸散がおきて、これにより微小な爆発が生じて破壊される。とも考えられています。
Er:YAG(エルビウムヤグ)が吸収されやすいものである二つ(ハイドロキシアパタイトと水)が主成分でできているのが、歯ということです。
そこからもEr:YAGレーザーが歯の治療などに向いてるんじゃないかというイメージはわいてきましたか?
また熱についてなんですが、
レーザー照射時に一番問題となり、我々歯科医師が気をつけることは誤照射だったり照射過剰になってしまうことです。
例えば、口内炎ができたとして、それをレーザーで焼いていくとします。そのときに、表面吸収型であれば、照射した部分の表面浅いところに限局してレーザーの熱影響が及びます。しかし組織透過型のレーザーであると、注意をしないと、思わず粘膜の奥深くまで焼いてしまうことになりかねないのです。
このことからも、過剰になりすぎないという点でも安全であると言われているレーザーです。
このレーザーは虫歯にも強いです。
それはなぜかといいますと、虫歯(う蝕)に犯された歯は、通常の健全な歯よりも水分含有量が多いです。また、う蝕原因菌がいます。菌の体内には水分が多く含まれ、この水分にまたレーザーが反応するのです。そのため、虫歯の部分をレーザーで効率的に除去することができ、かつ照射部位を殺菌することが可能なのです。
ということで、次のページからは、私の研究分野、Er:YAGレーザーについて述べていきます。
参考文献:ErYAGレーザー臨床研究会