1.本ガイドについて
本ガイドはヨーロッパ文学における「〇〇主義」といった文学潮流を思想史的・歴史的背景と共に概略する文学入門的なガイドです。
文学をやっている(読んでいる)と必ず出くわす「〇〇主義」。「ロマン主義…ロマン…Roman…?浪漫…?一体、ロマン主義とは何ぞや?」といった具合に、名前だけで何となくで分かってるような、でもやっぱり分かってないような、そういったことがありませんか?文学部の学生だけでなく、文学を専門に研究している大学院生であっても、その「〇〇主義」が自身の研究対象から外れる場合にはこういったことはよくあります。しかし、たとえ専門外であっても、これらのヨーロッパ文学の主潮を知っておくことは、学業上においても研究上においても非常に有意義なことに思われます。
本ガイドは文学部所属の学生や人文科学府の大学院生をメインのターゲットとしていますが、文学が好きな読書子は勿論、ある作品を読んで「この作品を深堀りしたい」と思った方々にも読んでいただけるよう、あまり専門的に過ぎないよう注意して書いています。そういった文学が専門外の方々にもこのガイドを手に取っていただけると幸いです。
2.本ガイドの構成について
文学「潮流」という名の通り、「〇〇主義」を概観する上で重要なのは、その前後の「〇〇主義」との関係、つまり「流れ」であり、(歴史も一種の「流れ」ですから)その「〇〇主義」の歴史的・思想史的背景です。それゆえ、本ガイドの構成はヨーロッパ文学における主たる文学潮流を時代の「流れ」に沿いながら、その文学潮流を代表する作品と共に概略するという形を取っています。
しかしながら、各章ごとにその章で扱われている潮流とその前後の潮流の関係を簡単に記載していますので、興味がある文学主潮や文学作品についての概略の「つまみ読み」も可能です。また、本ガイドで紹介される作品は関連書籍も含めて全て九州大学図書館に所蔵のものですので、気になった作品はぜひお手に取ってみてください。
3.本ガイドの取り扱い範囲について
本ガイドはヨーロッパ文学史における中世ヨーロッパの文学を取り扱います。というのも、古代から現代までの文学を一つのガイドに取りまとめようとすると、膨大なページ数を必要とし、かつ一つのガイドに収める以上、どうしても情報量を削らなくてはならなくなるからです。なお、本ガイド「ヨーロッパ文学における○○主義って何?」は全体として3部構成、9つの時代区分でヨーロッパ文学を扱います。本ガイドの全体的な構想は本節末尾に図示しています(「構想」ですので今後変化する可能性はあります)。
本ガイド第一部で扱う時代(中世ヨーロッパを含む古代ギリシア・ローマからルネサンスまで)は文学のいわば揺籃期であり、それゆえ「〇〇主義」といった確固とした主要な文学潮流はあまり見受けられません。そのため、「〇〇主義」についての解説ではなく、文学史に則った(叙事詩や戯曲といった)ジャンルの解説とその代表作についての解説が本ガイドのほとんどを占めることになるでしょう。しかしながら、本ガイドで取り扱う時代には後の文学潮流に繋がっていく萌芽(あるいは「潮流」という言葉を意識するなら「水源」とでもいうべきでしょうか)が存在します。「〇〇主義」が文学「潮流」である以上、これらの萌芽はルネサンス以降に確立されていく「〇〇主義」の理解のための一助になると思われます。
本ガイドは努めて『アーサー王物語』や『ハムレット』などの有名かつ重要な作品を中心に取り上げています。本ガイドで扱う時代の文学様式をあまり知らない場合でも、これらの有名な作品に興味がある方は是非ご一読ください。