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図書館TA(Cuter)に研究術をきいてみた: 笠 元

図書館TA(Cuter)がどのように研究を進めているのか、論文の見つけ方・管理法などを紹介します。

研究方法を教えてくれる図書館TA(Cuter)は「笠 元さん(生物資源環境科学府)」です!

こんにちは。生物資源環境科学府 修士課程 国際コース 2年の笠 元(りゅう つかさ)です。

専門は魚類免疫学で、特に魚類細胞の抗原に対する免疫応答に関する研究をしています。

このページの作成者

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Tsukasa Ryu
連絡先:
本ガイドは図書館TA(Cuter)として勤務した際に作成したものです。

勤務期間: 2020年5月〜
作成時身分:大学院生
作成時所属:九州大学大学院生物資源環境科学府生命機能科学専攻水産分野

海が好きな元インターナショナルスクール生です。競技ヨーヨーの選手もやっています。

Small Tips - 研究データのファイル名

研究を進めていくと、人によっては大量の研究データがパソコンに蓄積されていきます。

そこで考えておきたいのが研究データのファイル名です。

毎回思いつきで名前をつけて保存してしまうと、必要な時に限って見つからなくなったり、間違えて削除してしまったりとトラブルの元になってしまいます。

 

私の場合

「日付_実験キーワード(または実験の通し番号)_サンプル名+その他情報」

という形で保存しています。

実験日が最初にくることで、実験ノートの日付を照らし合わせてファイルを見つけやすくするという意図があります。

また、データ読み込み時のエラーなどを防ぐために、全て半角英数字にしています。

拡張子も見えるように設定しておくと一目でファイル形式がわかり便利です。

このように、ファイル名にルールを決めておくとよいでしょう。

整理整頓は立派な研究術です!

Fun fact - メンデルのデータ量

エンドウ豆を用いた実験から「遺伝の法則」を発見したメンデル(グレゴール・ヨハン・メンデル; Gregor Johann Mendel - 1822~1884)は、当時一万株以上ものエンドウを栽培し、「1万2980個のサンプルを観察し統計をとっていた」とされている。

適切なサンプルサイズというものは必ずしも膨大であるとは限らないが、時に統計的に裏付けされたデータ量は研究において力強い証明(エビデンス)になることがある。

もちろん、統計解析ソフトなど存在していない時代であることから、メンデルの忍耐力と努力量は凄まじかったことが容易に想像できる。

 

参考文献

竹内均. 世界の科学者100人 未知の扉を開いた先駆者たち. 教育社. 1990. 613P. ISBN4315511986

<http://hdl.handle.net/2324/1001203194>

 

卒論ガイド

Cuterたちの卒論エピソードが読める卒論ガイドはこちら!

私の卒論ができるまでシリーズ: ガイド一覧

僕たちの卒論エピソードやおすすめ本にも何か参考になる研究術のヒントがあるかもしれません。

論文の探し方

研究室に所属したばかりの学生からは、

「論文はどのように見つけていますか?」

という質問を多くいただきます。

この場合、僕の回答は質問に質問を返すようになってしまうのですが、「何のために論文を探しているのか」を確認することから始まります。

 

なぜかというと、

論文の探し方は、目的によって変わります。

 

例えば、

「自分の研究に関連する先行研究はあるか」

「自分の考察を支える内容の研究があるか」

「実験の条件設定で参考にできる研究があるか」

などの目的で論文を探す場合だと、探している情報が比較的明確です。このような場合は、キーワード検索や、関連する文献の参考文献から論文を見つけることが多くなります。

 

さらに、より受動的に「面白い論文を見つける」ことも時には重要です。

これは探している情報が明確ではないため、比較的ランダムに論文に出会う機会を増やす方法です。

自分で検索をかけるよりも広範囲に探れるため、知識の幅が広がるだけでなく、新しいアイデアやインスピレーションのきっかけにもなります。

 

ここで、自分が行なっている論文を探すテクニックをいくつか紹介します。

  1. 興味のある文献や、自分の研究で重要度の高い文献は必ず参考文献に目を通す。
  2. 頻繁に出くわす研究者の名前は覚えておき、その研究者名で検索をかける場合もある。
  3. TwitterなどのSNSで気になる研究の話題があればブックマークしておき、後でまとめて元の論文を集める。
  4. ニュースやブログなどで触れられている研究に興味をもったら、必ず研究者と論文の原著を見つける。
  5. 論文の出版社のウェブサイトで会員登録をしておき、定期的な配信やおすすめを受け取る。
  6. Google Scholarのアラート登録で、ヒットした文献情報を定期的にメールで受け取るようにする。

 

論文の管理方法

論文の管理方法は自分にとっても永遠の課題だと思っており、個人的に色々と試しています。

現時点で行なっている方法は以下の通りです。

 

  1. Mendeley Desktopと外付けHDDに論文のファイルのバックアップを取る。(紙で持っている論文も含め)
  2. Mendeley内で研究テーマごとにファイルを作り、そこに振り分ける。振り分ける際に論文のcitation情報もチェックし、必要であれば修正する。
  3. プリントした紙の論文は研究テーマごと、もしくは論文の種類ごとに色分けされたリングファイルにまとめている。
  4. 特に重要な論文は、読んで思いついたコメントなどをワードファイルにもまとめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

    ←ファイルはテーマや論文の種類ごとに色分けしておくと便利。

論文の読み方

ここでは個人的な論文の読み方を大まかに紹介します。

 

僕の場合、読書は紙派なので、しっかりと読みたい時は絶対にプリントしています。

重要な文章はハイライト、わからないところは青ペンなどで「何がわからないか」を書き込み、赤ペンでそれぞれのデータの関連性や意義を書き込み、最後に空いたスペースに自分なりの論文の要約を書きこみます。

このように複数の色を使って書き込むことで、後から読み返しても書き込んだ意図がわかるようにしています。

最後に、プリントした論文に白紙を追加し、そのページに論文中で知らなかった単語や知識などのノートをとります。

これら一連のプロセスは時間がかかりますが、僕にとって勉強になるだけではなく、内容を記憶に残すために効果的だと考えています。

その他研究で注意していること

他にも、研究に取り組む上で意識していることがたくさんあります。

 

1. 原理を理解する

自分が行なっている実験の背景にある原理を理解することはとても重要です。

実験がうまくいかない場合や、手法に変更を加える場合、条件設定を行う場合に原理がわかっていないと大幅に時間を無駄にしてしまうことも少なくありません。

実験の安全などにも関わってくるので、原理を理解することを怠らないようにしましょう。

 

2. 精神的に健康な時に実験をする

これは自分が身をもって学んだことの一つです。

考え事や不安で上の空で行う実験は危険ですし、ミスにつながります。

また、もしうまくいったとしても、実験ノートに記入漏れがあったり、必要以上に時間がかかったり、思うようにいきません。

そのため精神の健康は研究において優先すべきものだと考えるようになりました。

研究に影響が出るほど疲れていると感じたら、迷わず休息をとりましょう。

 

3. 目標を高く設定する

研究はなかなか思い通りに進みません。

だからこそ、あえて目標を高く設定することで、少しの進捗でも気を緩めずに突き進むことができます。

例えば「国際誌に論文を一本載せる」など、少し高めの目標を設定した上で、スケジュールを組むと、結果的にゆとりを持って研究ができると考えています。

 

4. フットワーク軽く

研究は「あなたのプロジェクト」です。

自分の頑張り次第で進捗が変わるので、怠ければ怠けるほど結果は遠のきます。

わからないことはすぐに調べる、準備は早めに行う、知見を得れることには積極的に向き合う。

なるべく積極的に研究に取り組むことで、研究の進捗も見えてくるのでモチベーションに繋がります。

 

5. 教授や先輩に助けを求めることを躊躇しない。

これは特に重要です!

もし自分で考えたり調べてもわからないことや、不安なことがあれば、躊躇わずに人に聞きましょう!

もっと早く相談していれば...なんてことにならないように、困った時は先輩や教授に相談することを忘れないでください。

 

研究術の参考にしたい本

最後に、研究術の参考になりそうなオススメの図書をいくつか紹介します。