子宮頸がんとは、子宮頸部(子宮の入り口付近)にできるがんのことです。
好発年齢は30~40歳代ですが、20歳代の患者さんも増えており、若い女性に多いのが特徴のがんと言えます。ちょうど出産の時期と重なることから、欧米では、子宮頸がんを「マザーキラー」と呼ぶこともあるそうです。
また、子宮頸がんは20~30歳代の女性におけるがん罹患率2位と報告されています(2020;国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)より)。
年齢別罹患率:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん登録)より作成
日本では、全国で10,879人(2019年)の女性が子宮頸がんと診断され、2887人(2020年)が子宮頸がんによって亡くなっています。
子宮頸がんは、異形成や上皮内癌という前がん病変を経て、生じます。前がん病変である上皮内癌を含めると、子宮頸がんの罹患率は増加傾向にあることがわかります。
罹患率の年次推移:国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」(全国がん罹患モニタリング集計(MCIJ))より作成
子宮頸がんの症状には、不正性器出血や性交時の出血がありますが、前がん病変の時期には症状を呈することはなく、がん検診によって発見されることが多いです。子宮頸がんを予防すること、早期発見することはとても大切なことだと言えます。
子宮頸がんは、HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することで、発症します。
ヒトパピローマウイルス自体は、ありふれたウイルスで、性行為をしたことがある女性の半数以上が生涯に1度は感染したことがあると言われています。HPVに感染した場合でも、自然に排除されれば病気を発症することはなく、問題ありません。
HPVは皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100種類以上のタイプが発見されており、そのうち約40種類が性器に感染します。また、その型により、引き起こされる病態が異なります。HPVの型と、それによって引き起こされる病気の例は以下の通りです。
<HPVの型によって引き起こされる病気の例> 引用:病気がみえる vol.10 産科,第4版
HPV型 | 引き起こされる病気 | |
ハイリスク型 |
16・18・31・52・58型など |
子宮頸がん |
ローリスク型 | 6・11型 | 尖圭コンジローマ |
2・4型 |
尋常性疣贅 |
|
3・10型 | 青年性扁平疣贅 |
さらに、HPVは、発がんのリスクによって、ハイリスク型とローリスク型に分けられます。つまり、たくさんの種類があるHPVのうち、発がんのリスクが高いハイリスク型に感染し、排除されなかった場合、がんを発病してしまうということです。
HPVにかかった場合、子宮頸がんなどの病気を発症すれば、それに対する治療は存在します。しかし、HPV感染に対する治療法はないため、感染してしまうと、人為的に取り除くことは困難です。いわゆる『子宮頸がんワクチン』は、HPVワクチンのことです。HPVに感染する前に打つことで、感染を予防しようとするものになります。