ここでは、「おまけ」として、子宮頸がんのさらに詳しい病態と治療法、子宮頸がんと妊娠・出産についてお話しします。
さらに詳しく知りたいと思った方は、ぜひ最後まで読んでみてください!
子宮頸がん検診によって採取された細胞は、ベセスダシステムに基づいて判定され、その後の取り扱いが定められます。
<ベセスダシステム2001細胞診結果とその取扱い> 子宮頸がん取り扱い規約臨床編第4版より
結果 | 英語表記 | 略語 | 推定される病理診断 | 取り扱い |
1)陰性 | Negative for intraepithelial lesion or malignancy | NILM | 非腫瘍性所見,炎症 | 異常なし:定期検診 |
2)意義不明な異型扁平上皮細胞 | Atypical squamous cells of undetermined significance | ASC-US | 軽度扁平上皮内病変疑い |
要精密検査: |
3)HSILを除外できない異型扁平上皮細胞 | Atypical squamous cells cannot exclude HSIL | ASC-H | 高度扁平上皮内病変疑い | 要精密検査:直ちにコルポスコピー,生検 ※コルポスコピー:コルポスコープという拡大鏡を使って、子宮頸部の細胞を見る検査です。拡大鏡を使うことで、細胞の形をより詳しく見ることができます。 |
4)軽度扁平上皮内病変 | Low-grade squamous intraepithelial lesion | LSIL |
HPV感染 |
|
5)高度扁平上皮内病変 | High-grade squamous intraepithelial lesion | HSIL |
CIN 2 |
|
6)扁平上皮癌 | Squamous cell carcinoma | SCC | 扁平上皮癌 | |
7)異型腺細胞 | Atypical glandular cells | AGC | 上皮内腺癌または腺癌疑い | 要精密検査:コルポスコピー,生検,頸管および内膜細胞診または組織診 |
8)上皮内腺癌 | Adenocarcinoma in situ | AIS | 上皮内腺癌 | |
9)腺癌 | Adenocarcinoma | Adenocar-cinoma | 腺癌 | |
10)その他の悪性腫瘍 | Other malignant neoplasms | other malig. | その他の悪性腫瘍 | 要精密検査:病変検索 |
子宮頸がん検診でASC-US以外の異常所見が認められた場合、コルポスコピーが行われます。これは、コルポスコープという拡大鏡を使って腟部の細胞の形をみる検査です。コルポスコピーで異常所見がある場合は、子宮頸部の組織を採取して検査する生検が行われます。
ASC-USが認められた場合は、主に、ハイリスクHPV検査(頸部の細胞からDNAを抽出してハイリスク型HPVの有無を調べる検査)が行われます。この検査で陽性であった場合は、コルポスコピーが行われ、さらに異常所見が認められた場合は生検に進んでいく流れです。
子宮頸がんは、発生する細胞の種類により、扁平上皮癌と腺癌に分けられます。子宮頸がんの大部分を占める扁平上皮癌は、CINという前がん病変を経て発生します。「異形成」という名前を聞いたことがあるかもしれません。CINは、異形成と上皮内癌(CIS)を総称してCINと言います。軽度異形成(CIN 1)や中等度異形成(CIN 2)では、自然に消失することも多く、経過観察が行われることも多いです。中等度異形成が長く続く場合などでは、レーザー蒸散術という治療が行われることもあります。また、高度異形成(CIN 3)以上では、円錐切除術といって、子宮頸部を円錐型にくり抜く手術が行われます。この手術では、子宮が温存されるため、妊孕性を保つことができます。そのため、定期的な子宮頸がん検診による早期発見が大事だと言えます。
前がん病変から進行して子宮頸がんとなってしまった場合は、臨床進行期分類によって治療が定められます。子宮頸がんの進行期は、Ⅰ~Ⅳ期に分類され、進行するにつれて数字が大きくなります。さらに、各期は、その浸潤の程度によってさらに細かく、ⅠA1期やⅠA2期などに分類されます。
<進行期分類>
Ⅰ期 | がんが子宮頸部にとどまるもの |
ⅠA期:組織学的にのみ診断できる浸潤がん(肉眼的に明らかなものはⅠB期) ⅠB期:子宮頸部にとどまる浸潤がんのうち、浸潤がⅠA期を超えるもの |
|
Ⅱ期 | がんが頸部をこえて広がっているが、膣壁下1/3または骨盤壁には達していないもの |
ⅡA期:膣壁浸潤が認められるが子宮傍組織浸潤は認められない ⅡB期:子宮傍組織浸潤が認められるが、骨盤壁までは達しない |
|
Ⅲ期 | がん浸潤が膣壁下1/3まで達するもの、ならびに/あるいは骨盤壁にまで達するもの、ならびに/あるいは水腎症や無機能腎の原因となっているもの、ならびに/あるいは骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの |
ⅢA期:がんは膣壁下1/3に達するが、骨盤壁までは達していないもの ⅢB期:子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの、ならびに/あるいは明らかな水腎症や無機能腎が認められるもの ⅢC期:骨盤リンパ節ならびに/あるいは傍大動脈リンパ節に転移が認められるもの |
|
Ⅳ期 | がんが膀胱粘膜または直腸粘膜に浸潤するか、小骨盤腔をこえて広がるもの |
ⅣA期:膀胱粘膜または直腸粘膜への浸潤があるもの ⅣB期:小骨盤腔をこえて広がるもの |
治療方法は、上記進行期分類を基準とし、本人の希望や年齢、合併症の有無を考慮して、総合的に判断して決定されます。下記が進行期分類と治療方法を表にまとめたものです。下段に書いてあるものは、挙児希望がある場合(妊娠の希望がある場合)の治療方法になります。
<進行期分類と治療方法>
1.妊娠中の子宮頸がん検診
前述したように、子宮頸がんは、若い女性に多いがんです。そのため、妊娠・出産の時期と重なることが多く、がんの中では妊娠に合併することが最も多いと言われています。現在は、妊娠初期に行うべき検査の1つに子宮頸部細胞診(子宮頸がん検診)が含まれており、妊娠が子宮頸がん発見の契機となることもあります。
妊娠初期に行う子宮頸部細胞診によって、異形成以上の病変が見つかった場合、コルポスコピーと生検が行われます。
2.円錐切除術後の妊娠・出産
上のボックスで述べたように、高度異形成や子宮頸がんの初期では、円錐切除術が行われます。これは、子宮頸部を円錐型にくり抜く手術です。
円錐切除術後の妊娠では、早産率が8~15%であり、対照群の1.5~3倍と高い。(中略)その他、後期流産、早産期前期破水、帝王切開分娩等が増加することが報告されている。(引用:産婦人科診療ガイドライン2023)
やや怖い単語が並んでいますが、妊娠・出産ができなくなるというわけではありません。妊娠を希望する方で、治療を受ける場合は、治療を受ける前に、医師に事前に相談しましょう。
中外製薬さんのホームページにわかりやすくまとめてあります。さらに知りたいと思った方は、こちらを見てみてください。