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★ノーベル化学賞をわかりやすく: 野依良治

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分子の右手と左手を選別

3人目の受賞者は野依良治博士です。

受賞理由は「不斉触媒による水素化反応の研究」です。

まずは、右手と左手を思い浮かべてください。

右手を鏡に写すと左手が現れますよね?このような関係にあるものを鏡像異性体と呼びます。

分子にも右手と左手のようなものが存在し、右手は有益で、左手は有害という場合がしばしばあります。

代表的な例が大きな社会問題となったサリドマイドです。

右手は鎮静剤として薬になるのですが、左手は胎児に奇形をもたらすことが後に判明するのですが、まだ右手左手の性質がよく知られていないときは両方をごちゃまぜにして薬として使っていたので、後に大問題となったのです。

つまり、化合物を作る段階で、右手型と左手型を分けることは非常に重要なことで、これを作り分ける方法を発見したのが野依博士だったのです。

どんな手法で右左を作り分けることができるようになったのか、簡単にご説明します。

まず、Cは4本の手を持っており、それぞれ他の原子と結合することができます。この4本の手がそれぞれ違う分子と結合したとき、鏡像異性体というものが発生し、右手と左手の分子ができるようになります。この4つの手がそれぞれ違う分子とつながっている炭素を不斉炭素といいます。

さて、この鏡像異性体、いつ発生するのかというと、二重結合と呼ばれるものを切ったときに発生します。

そしてこのときまさに、それぞれの不斉炭素について、最初の図で挙げたような右手と左手の関係にあたる鏡像異性体が発生します。

右左の組み合わせの可能性として、右右、右左、左右、左左の4通りがありますが、どの組み合わせができるかは反応条件や分子構造によって異なり、どれかを選択的に得ることは難しいのが現状でした。

そこで野依教授はBINAP触媒というものを開発し、これと一緒に水素付加を進めると、ある特定の組み合わせを高い収率で得ることができるのを発見したのです。

図からも分かるように、BINAP触媒自身が鏡像異性体であり、これが右左を作り分けるときに大きな意味を持っています。

また、人間が生きていくために必要なアミノ酸も右左が存在し、なんと人体には左手型のものしか含まれていないのです。

なぜ生体は左手型のものだけを好むのか。これは今日でも解明されておらず、これを解明すればノーベル賞と言われています。

ちなみに、素粒子物理学の世界でも「神は左利き」という言葉があり、2001年にノーベル物理学賞を受賞した小柴教授が観測に成功したニュートリノとよばれる素粒子は、左巻きのものしか発見されていないそうです。

人間の生命を支えるアミノ酸も左利き、物質の最小単位である素粒子も左利き。自然の奥深さを感じるのは僕だけでしょうか。