新海先生は様々な分野で業績を挙げられており、業績を一言で表すことは非常に困難です。
その中でも特に評価が高いのが、分子機械の先駆的研究です。
分子機械とは、いわゆる機械のような機能を分子にも持たせようという概念です。
新海先生は、アゾベンゼンとクラウンエーテルという2つの化合物を組み合わせて、光を当てることで分子構造が変化し、捉えるイオンの種類が変わる分子を設計しました。
具体的には、光を当てる前はトランス型と呼ばれる構造をしており、ナトリウムイオンを捕まえるのですが、そこにUV光を当てると分子の構造が変化し、シス型という構造になり、少し大きなカリウムイオンを捕まえるようになります。再び可視光を当てるとナトリウムイオンを捕まえるようになり、光を当てることで、まるで機械のように構造を変化させることができるのです。
さて、最近もいろいろな研究が行われている分子機械ですが、まだまだ生体内にある分子機械の精度には全く追いついていません。
「セントラルドグマ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?体内のDNAをRNAに転写し、タンパク質を作り出す、という生命活動の最も重要な機能の一つです。
以前作ったガイド「DNAって何だろう?」に書いたように、DNAはA、T、C、Gとよばれる4つの塩基によって構成されています。何億という塩基をDNAからRNAに移すので、当然写し間違いが出てくるのですが、その確率、10億分の1です。しかも、写し間違えてもすぐにミスをカバーする仕組みが備わっています。
生体内にある分子機械はこれほどまでに精密な作業を日々やっているのです。
この他にも新海先生は、多くの分野で著名な成果を挙げられており、九大応用化学に多大な貢献をされた先生の一人です。