8人目の受賞者は、旭化成株式会社名誉フェロー吉野彰博士です。九州大学栄誉教授でもあります。
受賞理由は「リチウムイオン二次電池の開発」
田中耕一さんに続き、大学ではなく企業で研究に従事してきた2人目のノーベル化学賞受賞者です!
ノーベル化学賞の受賞理由は難しいものが多い中、「リチウムイオン電池」は聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。
スマートフォンや電気自動車など身近なものにも使われていて、日々お世話になっているものですね。
このページでは、まずはリチウムイオン電池の原理、そしリチウムイオン電池のすごさを説明します。
リチウムイオン電池の話をする前に、そもそも「電池」とは何なのか簡単に説明します。
電池は「一次電池」と「二次電池」に分けられます。
「一次電池」とは使ったら捨てる電池、「二次電池」とは、充電をすることで繰り返し使うことのできる電池のことです。リチウムイオン電池もこれに含まれます。
まず、以下の図で概要を示します。
日立化成株式会社HP(https://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/products/sds/lbattery/006.html)
リチウムイオン電池は、リチウムイオンが負極(右側)から正極(左側)へ移動する際に電流が生じるので、
その電流を使って、ディスプレイを表示させたりします。
次に、充電の際には、電圧をかけてリチウムイオンをさっきとは逆の正極(左側)から負極(右側)へ移動させます。
するとまた電池として使えるようになります。
これを繰り返すことで、リチウムイオン電池は何度も繰り返し使うことができるのです。
リチウムイオン電池の特徴の一つに「メモリー効果」の影響を受けにくい、ということが挙げられます。
リチウムイオン電池以前に、二次電池として普及していたものに「ニカド電池」というものがあります。その名の通り、ニッケル(Ni)とカドミウム(Cd)を電極材料として使った充電可能な電池です。
何度も使えるので、使い勝手は良い一方で、「電池を使い切らない状態で充電をすると、電池の容量が減ってしまう」という「メモリー効果」を持っていました。例えば、寝る前にスマートフォンの充電を確認したら60%で、「明日まで持ちそうだけど、念のため充電しておきたい。でもバッテリーの容量が減るのは嫌だから充電は止めとくか…」という状況を経験した人もいるのではないでしょうか。
リチウムイオン電池においては、このメモリー効果の影響が少ないと言われており、60%から充電を始めても基本的には問題はないので、電池の使い勝手は向上していると言えると思います。
一方で、リチウムイオン電池も使用する材料によってはメモリー効果が発生することが報告されており、今後、更なる研究が進められると考えられます。
【参考文献】
Sasaki, Tsuyoshi; Ukyo, Yoshio; Novák, Petr (2013), “Memory effect in a lithium-ion battery”, Nature Materials 12: 569–575
2019年12月8日に行われたノーベルレクチャー(ノーベル賞受賞者が行う講演)で、吉野博士は、自身の研究の歴史、リチウムイオン電池の今後の可能性について約30分間講演を行いました。動画は以下から見ることができます。(吉野博士の講演は1:04:30ぐらいから)
吉野博士は最後に次のようなメッセージで講演を締めくくっています。
"This is my message to the world. Innovation all around will enable a sustainable society to be achieved very soon. The battery will play a central role."
"「持続可能な社会は技術革新によってもたらされ、その中でもリチウムイオン電池は中心的役割を担うだろう。」"
化石燃料の使用減少による温暖化対策やエネルギー効率の改善が待ったなしの課題となる中、リチウムイオン電池はこれから更に研究が進められていくことでしょう。