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★線虫 C. elegans ~約1ミリのモデル生物で切り拓く生命科学~: 寿命

たった1ミリのモデル生物、線虫C. elegansを用いた研究について解説します。

「寿命の長さ」ってどのように決まるのだろうか?

 皆さんは、「寿命の長さ」はどのように決まると思いますか?よく巷で言われている「長寿の秘訣は○○です!」などというように、日々の生活習慣などどいった環境の要因が主な原因だと思いますか?それとも、遺伝子などによって積極的に制御されているというイメージをお持ちでしょうか?【図21】

 

【図21】「生まれてから死ぬまで」の長さはどのように決まるのだろうか?

 

 

 

 答えとしては、「これだ!!」という決定的な要因はありませんが、現在までの研究によると、様々な環境の要因と複数の遺伝子がお互いに影響し合いながら、寿命がコントロールされていると考えられています[10]。しかし、ひと昔前の研究者の間では、「寿命の長さ」は、環境からのダメージなどが徐々に蓄積して、しかるべき時が来たら命を終える、といったように、消極的に決まっているものだと考えられていました。それゆえ、遺伝子によって積極的に寿命をコントロールするようなメカニズムが存在するとは考えられていませんでした[10]。しかし、線虫でのある知見がきっかけで、その考え方が大きく変わることになるのです、、、。

 

参考文献

[10] Kenyon, C. (2011). The first long-lived mutants: Discovery of the insulin/IGF-1 pathway for ageing. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences366(1561), 9-16. https://doi.org/10.1098/rstb.2010.0276

線虫で発見された寿命をコントロールするメカニズム

  線虫は、約20日という生存期間の短さから、老化や寿命について解析が行いやすいモデルとして用いられています。これまでに、線虫を用いた研究で、寿命の決定に関わる複数の遺伝子が同定されています。

  その中でも代表的な例として、ケニヨンらによって同定された、daf-2(ダフ-2と読む)という遺伝子です。このdaf-2遺伝子に異常がある(変異がある)と、寿命が約2倍に伸びることが明らかになりました[11](通常だと平均約20日だが、daf-2変異体だと平均して約42日生きていた)。このケニヨンらの成果により、寿命というのは、遺伝子によって積極的に決められている仕組みが存在しているとが提唱されました。この成果は、1993年に著名な科学雑誌Natureに掲載されました[11]。(ケニヨンによるTED talksで詳しく語られています【動画4】)

  その後の研究で、daf-2遺伝子は、インスリンの受容体として機能していることが分かりました[12]。聞いたことがある方が多いかと思いますが(おそらく)インスリンは血糖値を下げるホルモンです。インスリンが働く遺伝子群は、線虫やショウジョウバエ、マウス、ヒトなど様々生物でも見られることが知られています。さらに、線虫以外の他の生物(ショウジョウバエ、マウス)を用いた研究でも同じようにインスリンが関わる遺伝子群が寿命の制御に関わっていることが明らかになり【図22】[13]、「インスリン」と「寿命」との関係が注目されるようになりました。

 

 

【図22】 線虫でのインスリンによる寿命制御のメカニズム

 DAF-16という転写因子(遺伝子の発現を調節する因子)が、「長寿」を促すような遺伝子の発現を促進している。しかし、細胞外でインスリンがDAF-2によって受容されると、DAF-16の働きが抑えられてしまう。

 

 

【動画4】 シンシア・ケニヨン: 長生きの手がかりとなる実験 (TED Talk)

参考論文

[10] Kenyon, C. (2011). The first long-lived mutants: Discovery of the insulin/IGF-1 pathway for ageing. Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences366(1561), 9-16. https://doi.org/10.1098/rstb.2010.0276

[11] Kenyon, C., Chang, J., Gensch, E., Rudner, A., & Tabtiang, R. (1993). A C. elegans mutant that lives twice as long as wild type. Nature366(6454), 461-464. https://doi.org/10.1038/366461a0

[12] Kimura, K. D., Tissenbaum, H. A., Liu, Y., & Ruvkun, G. (1997). daf-2, an insulin receptor-like gene that regulates longevity and diapause in Caenorhabditis elegans. Science (New York, N.Y.)277(5328), 942–946. https://doi.org/10.1126/science.277.5328.942

[13] Kenyon C. (2005). The plasticity of aging: insights from long-lived mutants. Cell120(4), 449–460. https://doi.org/10.1016/j.cell.2005.02.002

 

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