イギリスの動物行動学者であるリチャード・ドーキンス博士の著書です。
この本が初めに出版されたのは今から40年以上も前のことですが、今でも多くの人に読まれている有名な本です。
邦題である「利己的な遺伝子」は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
この本は、ダーウィンの進化論を軸に、別の視点として「遺伝子からの視点」を用いて生命現象の解釈を主張する内容です。語弊があることを承知した上で一言で要約すると、「生物は遺伝子という情報を残すための道具にすぎない」という考えを、遺伝子主体の視点でさまざまな生命現象を解説することで主張しています。
この、人によってはショッキングだとも感じるような主張は多くの反響を呼び、生命科学者の間でもたびたび話題にあがります。
しかし、R.ドーキンス博士が後に書き加えたプロローグでも繰り返し主張しているように、利己的遺伝子論は一つの視点であり、それが生命現象の絶対的な正解だと述べているわけではありません。一つのものには複数の見方があるように、この本はわたしたちに「遺伝子の視点」を提供している刺激的な本でした。
九州大学附属図書館には英語版と日本語版があります。
英語版もプロローグとエピローグは少し難しい表現が使われていますが、本文は比較的読みやすくなっており、あまり生物学に馴染みがない人でも読みやすく慎重に書かれている印象を受けました。