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救急外来で出くわす症候別疾患: 胸痛

頻度の高い疾患

□肺炎・胸膜炎

□逆流性食道炎

□帯状疱疹

□心膜炎

□胆石・胆嚢炎

□パニック障害

 

見逃すとまずい疾患

□急性心筋梗塞

□大動脈解離

□肺塞栓症

□緊張性気胸

□食道破裂

*5 killer chest painとも呼ばれている。

急性心筋梗塞

「絞められるような」「押さえつけられるような」「重苦しい」などと表現する胸部圧迫感を自覚していて、ST上昇などの心電図変化を認め、心筋トロポニン、H-FABPなどの心筋マーカーの上昇が確認される。喫煙、糖尿病、高脂血症などの冠動脈危険因子を多く持っていればより強く疑う。

急性心筋梗塞を疑う際は、血行再建を行う必要があるため直ちに循環器専門医にコンサルトを行う。

患者には必要に応じてMONA(モルヒネ、酸素、硝酸薬、アスピリン)を行う。

急性大動脈解離

発症が何時何分と言えるくらいon setがはっきりした、突然の裂けるような胸背部痛で発症する。

X線上縦隔の拡大を認める。既往に高血圧があること、大動脈解離の家族歴があることなどは急性大動脈解離の診断を支持する。

急性大動脈解離を疑う時はまず心嚢水の有無、上行大動脈に解離がないか、腹部大動脈に解離がないかをエコーで確認する。

確定診断には造影CTが必須であり、可能ならば直ちに造影CTを行う。

診断がつけば対応できる病院に緊急搬送する。搬送までの間は鎮痛と降圧、心拍数のコントロールを行う。

逆流性食道炎

胸やけが主訴で、呼吸器疾患などの明らかな原因がない慢性咳嗽を訴える。

咳嗽の好発時間は就寝時、夜間から早朝であり、喀痰は伴わないことが多い。

逆流性食道炎を強く疑う時は上部消化管内視鏡検査を行う。典型例では粘膜移行部の食道側に白苔およびその辺縁に帯状の発赤を有するびらんないし潰瘍を認める。

明らかな粘膜潰瘍がないときは24時間pHモニター検査まで行う。

気胸

主訴は胸痛・呼吸困難である。気胸による胸痛は運動中などよりも通常の日常生活を営んでいる時間帯に起こり、多くは時刻が特定できるほど突然に、呼吸によって増強する胸膜痛が片側性に出現する。

低血圧、頻脈、SpO2低下、頸部診察での気管の対側(気胸を起こしていない側)への偏位があれば、緊張性気胸(気胸のうちの数%)を疑う。

緊張性気胸を強く疑う時はその場での脱気の処置が必要となる。

症状・バイタルがともに安定していれば胸部X線写真の撮影を行い、経過観察が可能か、処置や紹介が必要かを判断する。

帯状疱疹

胸痛ではあるが、片側性の皮疹とピリピリやチクチクと表現するような異常感覚が見られる。

腎機能障害の既往について確認し、可能なら採血で腎機能を確認の上、早期に抗ウイルス剤の点滴または内服を開始する。

肺塞栓

突然の呼吸困難や胸痛の訴えがあり、頻脈、頻呼吸も高頻度で認める。Ⅱp亢進や頸静脈怒張など急性右心負荷所見を認めることもある。

造影CT検査による肺塞栓症の確定診断を行い、肺塞栓症であれば残存する深部静脈血栓症の評価と心エコーで右心負荷の有無を確認する。

初期治療としては急性右心負荷の解除と呼吸不全管理、血栓元である深部静脈血栓からの再発予防が重要となる。

二次血栓形成抑制を目的とした抗凝固療法や、積極的に血栓を溶解し、血行動態の早期改善を目的とする血栓溶解療法、再発予防を目的として使用する下大静脈フィルターなども治療の中心となる。

作成者

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小池 研太朗
連絡先:
本ガイドは図書館学習サポーターとして勤務した際に作成したものです。

勤務期間 :2014年5月~2015年11月
当時の身分:学部5~6年生
当時の所属:九州大学医学部医学科