□逆流性食道炎
□消化性潰瘍
□胆嚢炎、胆石
□腸閉塞
□虫垂炎
□過敏性腸症候群
□急性胃腸炎
□心筋梗塞
□重症膵炎
□消化管穿孔
□大動脈瘤破裂
□大動脈解離
□子宮外妊娠
□上腸間膜動脈塞栓症
□急性化膿性胆管炎
心窩部痛から始まり、右下腹部に移動してきた痛みで、腹部触診で右下腹部に限局する圧痛を認める。嘔気、嘔吐、食欲低下なども呈する。
高齢者、小児では上記のような特異的な症状を示さない非典型的な例も多い。
採血検査、超音波検査、造影CT検査などを行う。自施設で行うことができる画像検査で診断に近づく努力を行い、もし否定できないのなら適切な検査を行うことができる高次医療機関への搬送も考慮する。
腹膜刺激症状を呈している時は虫垂そのものだけでなく周囲への炎症の波及もあるため、検査や処置を急ぐ必要があることに注意する。
夕食後に突然発症することが多い。特に脂肪分の多い食後数時間後に多い。痛みは急激で鋭く、持続する右上腹部痛である。右肩に放散痛がある。
上腹部通,高熱,黄疸のCharcotの三徴を認めることもある.
(急性胆嚢炎では胆のう直上に手指で圧迫を加えながら深呼吸させると痛がるMurphy's signが見られる。)
急性胆嚢炎を疑った時は輸液を開始し、超音波検査を行う。さらにCT検査で確実に診断する。
早期診断と抗菌薬投与により手術を回避できる。
急激な上腹部痛と嘔気•嘔吐を認め、血中膵酵素の上昇を認める。
初発症状としては上腹部痛が最も多く(腹膜刺激症状も上腹部に限局していることが多い)、次いで嘔気•嘔吐、背部痛と続く。急性膵炎は嘔吐によって腹痛が軽減しないのが特徴である。
急性膵炎は入院治療を原則としバイタル測定や静脈ラインの確保と平行して、重症度判定を行う。
治療開始時は十分な輸液とモニタリングを行い。血圧と尿量を維持する。
以前より上腹部痛を認めていることが多い。(胃潰瘍では食後、十二指腸潰瘍では空腹時に見られる。)
痛みが持続性となり、食物摂取や制酸剤で寛解せず、背部へ放散するような場合には穿通性潰瘍の可能性がある。
消化性潰瘍を疑った時は上部消化管内視鏡検査を行う。潰瘍の穿通や穿孔の有無は腹部CT検査で精査する。
下部消化管内視鏡では異常所見を認めないが、慢性的に腹痛や腹部不快感と便性状の変化を繰り返す。
血便,粘血便、発熱や体重減少は基本的には認めず、就寝中に症状を来すことはない。
過敏性腸症候群を疑ったら、病歴聴取で慢性的な経過であろうことを確認し、血液検査や便潜血反応、便細菌培養検査、注腸造影検査もしくは下部消化管内視鏡などを行い、器質的疾患を除外する。
心血管系、腎、その他の糖尿病や高血圧などの全心疾患を罹患している高齢者に発症することが多い。激しい腹痛の割に腹部所見がほとんどないという特徴がある。
塞栓症としては心房細動などの心疾患の存在や脳塞栓や四肢の塞栓症の既往、血栓症としては食後の腹部違和感や体重減少などの腸管虚血を疑わせる症状がないか病歴聴取する。
塞栓症としては腹痛が急激で明確であるが、血栓症では発症が不明瞭で徐々に腹痛が強くなるという特徴がある。
上腸間膜動脈血栓症を疑ったら、造影CT検査を行い、血管造影や外科手術ができる施設に緊急搬送する。
嘔吐、腹痛、腹部膨満感、排便や排ガスの停止などの症状がそろっていれば診断は比較的容易となる。
腹痛はいつからか、突然か、緩徐か、腹痛の程度と性状、吐物の性状、随伴する症状などを尋ねて原因を考える。
術語の癒着性イレウスは最も多く手術の既往の有無も確認する。また腫瘍、胆石、異物なども考慮する。
イレウスを疑った際はバイタルサインを確認し、鼠径ヘルニアの嵌頓を見逃さないために、腹部は大腿部まで見えるようにし、鼠径部まで視診する。
また保存的治療が可能な単純性イレウスか、緊急手術が必要な絞扼性イレウスかを鑑別する。
発症が急激で、嘔吐を伴う、冷汗を認める時は絞扼性イレウスが疑われる。
また単純性イレウスでは腹痛は軽度で、圧痛や筋性防御は少ないこと、絞扼性イレウスでは、初期では絞扼した腸管に一致した、圧痛や筋性防御を認め、進行し腹膜炎を併発すると腹部全体に筋性防御を認めるといった特徴も覚えておく必要がある。