「滅菌」と「消毒」
この違いは何でしょうか?
「滅菌」は
病原体・非病原体を問わずすべての微生物を死滅、または除去すること
「消毒」は
病原性微生物を死滅、または除去させて感染の危険をなくすこと
と定義されています。
使用するものに対して滅菌が必要なのか、それとも消毒でいいのか選択する必要があります。
滅菌には以下のようなものがあります。
それぞれ特徴があるので必要に応じて使い分けましょう!
オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)
高温・高圧の水蒸気に直接接触させて滅菌する方法。
一般的に、2気圧、121℃、15~20分の条件で行なわれます。
対象となるのは、ガラス製器具、耐熱性プラスチック製器具、液体試薬*などです。
*ただし、液体試薬については熱によって変性してしまうものもあるため
試薬の添付文書などでオートクレーブが可能であるか確認する必要があります。
乾熱滅菌
高圧蒸気滅菌などと異なり、水蒸気などの媒体を用いないので、
水に弱い材質の滅菌に優れています。
高温に耐えられ、蒸気に触れさせられないもの(乾燥状態を保つことが必要なもの)
などの滅菌に使用されます。
対象になるのは、ガラス製品、金属製品、陶器などです。
濾過滅菌
実験に使用する液体試薬の中には熱によって変性してしまうものが多く存在します。
このような試薬の滅菌に有用なのが濾過滅菌です。
通常0.22 μmのフィルターが使用されており、
これはバクテリアやカビ、酵母などは通さないため、
試薬中からこれらの物質を除去できるとされています。
培養で使用する培地(一部はオートクレーブ可)や血清など熱により変性するものの
滅菌法としてはよく使用されています。
しかし、マイコプラズマやウイルスなどはこのフィルタを通過してしまうため、
滅菌法としては完全ではないことは理解しておく必要があります。
酸化エチレンガス(EOG)滅菌
酸化エチレンガスの殺滅作用は、微生物を構成するタンパク質のアルキル化によるものです。
酸化エチレンガスには毒性があり、滅菌処理後のエアレーション(空気置換)により残留ガスを
除去し、被滅菌物にガスが残留しないようにする必要があります。
酸化エチレンガスによる滅菌に必要な時間は2~4時間とされており、滅菌後のエアレーションに
8~12時間(温度条件による)必要です。
対象は主にプラスチックやゴム製品で、滅菌物は乾燥している状態である必要があります。
(酸化エチレンが水分と反応してエチレングリコールになってしまい
滅菌効果が発揮できなくなるから)
過酸化水素ガスプラズマ滅菌法
過酸化水素ガスを高真空下でプラズマ化したときの複合作用を利用する滅菌法です。
このプラズマは反応性が高いラジカルで、
これを微生物と反応させて死滅させることが滅菌の原理です。
過酸化水素ガスプラズマは他の滅菌用ガスと比べて毒性が低く、
低温(45℃)・低湿度(相対湿度約10%)で滅菌でき、
滅菌後のエアレーションは不必要です。
対象は金属・非金属、非耐熱・非耐湿の器具など広く使用できます。
しかし、紙、リネン、綿布、ガーゼ、セルロース系の
材質を含むもの(過酸化水素の吸着が大きい)や
液体、粉体(減圧や過酸化水素の拡散に悪影響を与える)
に対しては使用できないため注意が必要です。