培地を細胞が育つのにちょうど良いpHに維持するためには
バッファー(緩衝液)が必要です。
細胞培養でよく使用されるバッファーとしては
重炭酸が挙げられます。
(ちなみに私たちの体の中でも重炭酸系による
緩衝によりpHが一定に保たれています)
重炭酸の緩衝能は
CO2 + H2O ⇔ H2CO3 ⇔ HCO3 - + H+
により示されます。反応式を見てわかるように
重炭酸は CO2存在下で緩衝能を示すことが出来ます。
重炭酸を使用した培地はCO2 の濃度を
5 ~ 10 %に維持する必要があるため
通常の細胞培養ではCO2インキュベータが使用されています。
一方、HEPES緩衝液も培養に用いられることがあります。
HEPESはpH7.2 ~ 7.4の緩衝能に優れており、
CO2インキュベータの使用が出来ない場合や
よりpH変動を少なくしたい場合などに有効です。
(重炭酸系では細胞を観察するときなどインキュベータから
細胞を取り出すとpHの変動が大きくなってしまうため)
しかしながら、重炭酸バッファーに比べ高価であり、
高濃度になると細胞によっては毒性を示すこともあることから
先行する論文などで使用例があるか確認してから
使用するのがいいと思います。
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先行論文の探し方が分からない><
そんなときは下の2つのガイドを参考にしてみてください!
PubMedの基本的な使い方を紹介しています。
医・歯・薬分野の方に役立つデータベースなどを紹介しています。
培地の色は赤色??
細胞培養に用いる培地の多くは赤色をしています。
培地にはフェノールレッドというpH指示薬が
入っていてその影響で培地に色がつきます。
細胞培養に適切とされる培地のpHは、
細胞の種類によっても変わりますが、
おおよそ7.2~7.4で、フェノールレッドでは
赤みががったオレンジ?くらいの色調です。
これが、アルカリ性に偏ると赤紫色、
逆に酸性に偏ると黄色に変化します。
なぜ、フェノールレッドが含まれているのでしょうか?
フェノールレッドが含まれていると、
いちいちpHメーターを使用しなくても
おおよそのpHが分かります。
培地のpHの変化は色々な情報を与えてくれます。
例えば、インキュベータに入れている培地の色が
・赤紫色(アルカリ性)
⇒CO2インキュベータの故障の可能性。
十分なCO2がインキュベータ内に存在せず
重炭酸による緩衝能が適切に働いていないかも??
・黄色(酸性)
⇒細胞が育ちすぎている。
細胞の代謝物がたまりすぎると、培地が酸性になります。
⇒コンタミを起こしている。
カビなどのコンタミがおきると培地は酸性になります。
コンタミが疑われる時はできるだけすばやく廃棄し、
インキュベータや作業台などを消毒しましょう!!!