「儀礼折り紙」が作られる中で「遊技折り紙」も生まれたと推測されます。
ただ、具体的にいつ頃「遊技折り紙」が生まれたのか、明確な記録は残っていません。
とはいえ、手がかりが全く無い、というわけでもありません。
というのも、折り紙は、図案や絵柄として使われることがあったからです。
というわけで、古い時代の折り紙を探るために、折り紙の意匠が施された品々を見てみましょう。
2018年、とある装飾品が発見されました。
それは小柄(こづか)と呼ばれるもので、日本刀の鞘(さや)などにつけられる小刀なのですが、そこには折り鶴の絵柄が飾り付けられていました。
作者は後藤栄乗(ごとうえいじょう)といい、彼の生きた時代から推測して、この柄は16世紀末から17世紀初頭のものと考えられています。
これが、現在のところ最も古い、折り鶴の絵柄が残る遺物です。
ここから、少なくとも17世紀初頭、つまり戦国時代から江戸時代の初め頃には、すでに折り鶴が知られていたと考えられます。ひいては、「遊技折り紙」も、このころまでには生まれていたのだろうと推測されます。
時代は下って18世紀、1734年(享保19年)に『欄間図式』という本が出版されました。
この本は名前の通り、欄間のデザイン集なのですが、その中に折り紙を模したデザインが描かれています。下の画像の通りです。
[2-1]『欄間図式』より「折形」 |
これを見るとわかる通り、ここに描かれた作品の中には、現在でも親しまれているものもあります。
このような、古くから伝わった作品を伝承折り紙といいます。
『欄間図式』からは、18世紀には「伝承折り紙」がすでに作られ、多くの人々に知られていたことが伺えます。
ただ、現代と少し違い、このデザインには折形というタイトルがついています。当時はまだ、「折り紙」という用語が確立しておらず、「折形」「折据(おりすえ)」などと呼ばれていました。そして江戸時代の前期・中期には、このように装飾品や着物の柄として折形・折据が描かれることがしばしばあったのです。
[画像] | |
2-1 | 大英博物館蔵『欄間図式』下、十三丁表、十四丁裏 on The British Museum / CC BY-NC-SA 4.0 (2021.03.08参照) |
「折り紙の歴史」ページの記述にあたっては、下記資料を参考にしています。
小学館 日本大百科事典より「折り紙」(執筆者 菩提寺悦郎)
国立国会図書館リサーチ・ナビ 第151回常設展示 本の中の「おりがみ」 (2021.03.08参照)
日本折紙学会 岡村昌夫「折り紙の歴史」 (2021.03.08参照)
五十嵐 裕子「折り紙の歴史と保育教材としての折り紙に関する一考察」(浦和大学『浦和論叢』46,pp45-68) (2021.03.08参照)