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折り紙の歴史と現在: 芸術としての折り紙

文化として、遊びとして、芸術として、科学として…さまざまな形で進化する折り紙の姿を見てみましょう。

1. 芸術としての折り紙:吉澤章

戦後の折り紙を語るうえで、必ず触れるべき人物がいます。

折り紙作家の、吉澤章(よしざわあきら)氏です。

1911年(明治44年)栃木県に生まれ、幼いころから折り紙に親しみ、本格的に作品制作に取り組みました。

1954年に刊行された最初の著書は『新らしいおりがみ芸術』。このタイトルが象徴するように、折り紙を芸術の域にまで高めた人物です。

94年の生涯の中で数多くの作品を創作し、折った作品数は数万点にも及ぶと言われています。
1955年、アムステルダム市立美術館での個展を皮切りに、海外でも多くの展覧会を開催し、造形美術としての"ORIGAMI"を世界に広めました。

また、多くの著書を執筆して作品を広めると同時に、「山折り線」「谷折り線」など、折り紙の折り方を表すピクトグラムも整備し、折り紙を楽しむ環境を整えた人物でもあります。

人や生き物を描いた作品が多く、今にも動き出しそうな愛らしい姿は、見る人の心を優しく穏やかにさせてくれるかのようです。

参考:佐野美術館で「受贈記念 吉澤章 創作折り紙の世界」を開催、制作ワークショップも実施(Fasu子育て情報メディア)

吉澤氏をはじめ、昭和の後半にかけて、創作折り紙作家が続々と現れました。こうして、折り紙は「子どもの遊び」としてだけでなく、作者の思いや技巧を映し出す芸術へと進化していったのです。

[参考]
 

国際折り紙研究会「吉澤章(国際折り紙研究会)・折り紙の軌跡」(2019.12.02参照、現在リンク切れにつきリンクはアーカイブで代替)

2. 芸術としての折り紙:創作折り紙の進化

昭和の終わりから平成にかけて、折り紙は技術的にも地理的にも大きく発展しました。

  • 技術の発展

技術の面では、作品の設計方法がより高度に洗練されていきました。
折り紙を幾何学的に分析し、得られた知見を作品設計に生かす試みが、行われるようになりました。

折しもこの時代は、コンピュータが広く普及し、インターネットが爆発的に進化した時期でもありました。
新たな知見が生まれ、その知見が作家や愛好家たちの間で共有される、という環境が生まれたのです。

こうして、従来では考えられなかったような作品が生み出され、コンプレックス折り紙、あるいは複雑系折り紙などと呼ばれるようになりました。
現在では様々な作家が、技巧を凝らして精緻な作品を作っています。

  • 地理的な広がり

技術面と同時に、地理的にも折り紙は大いに発展しました。
アートとしてのORIGAMIを追究する作家が、海外にも現れるようになったのです。
洋の東西を問わず、様々な世代の作家が、作品を発表しています。

下の映像は、アメリカ合衆国の折り紙作家、ロバート・J・ラング氏による、TEDでのプレゼンテーションです。
ラング氏は、非常に緻密な作品を作る折り紙作家であると同時に、工学の研究者として折り紙を数学的に研究し、作品を設計するためのプログラムを開発しました。
このプレゼンテーションでラング氏は、折り紙が現在どのように進化しているのかを、折り紙になじみの薄い人にも分かりやすい語り口で紹介しています。

"The math and magic of origami" by Robert Lang on TED 2008

プレゼンテーションでも触れられている通り、折り紙は科学技術の分野でも大いに活用されています。どのように生かされているのか、次のページで見てみましょう。