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折り紙の歴史と現在: 科学としての折り紙

文化として、遊びとして、芸術として、科学として…さまざまな形で進化する折り紙の姿を見てみましょう。

※このページは、2021年3月に作成されました。掲載されている情報は作成当時のものです。

1. 科学としての折り紙:数学

折り紙作家が登場すると、様々な新しい作品が創作されるようになり、これまでになかった技法や、形も生み出されるようになりました。
折り紙ならどんな形でも作れるのか。あるいは、
折り紙にも作れない形はあるのか。あるとしたらどんな形なのか。
こうした関心から、折り紙を数理的に研究する作家が現れました。

中でも有名な定理として、川崎定理前川定理が知られています。
それぞれ、発見者の一人である川崎敏和(かわさきとしかず)氏、前川淳(まえかわじゅん)氏にちなんで名づけられました。
川崎氏、前川氏とも、折り紙の作家であり研究者です。

川崎定理:折り紙を平らに折って展開したとき、折り線の交点において、一つおきの内角の和が必ず180度になるという定理。(デジタル大辞泉 2021.3.4参照)

前川定理:折り紙を平らに折って展開したとき、その折り線が交差する点に着目すると、山折りと谷折りの線の数の差は、かならず±2となるという定理。(デジタル大辞泉 2021.3.4参照)

こうした知見は、折り紙作家のみならず、数学者からも注目されるようになりました。
従来の数学では対象としてこなかった幾何学的問題をめぐって、数学的な研究が行われています。

参考:松川剛久, 三谷純.「平坦折り紙の数理」(『日本応用数理学会論文誌』Vol. 27, No. 4, 2017, pp. 333~353)

こうして得られた知見は、数学のみならず他の分野にも生かされているのです。

科学としての折り紙:工学・建築

ふにゃふにゃな紙でも、折り目を入れると立てることができます。
さらに折り目を入れると、脆いはずの紙でも、強固な形を作ることができます。
紙を折ることにより、本来の紙には無かった性質が生まれます。
また、折った紙を動かすと、予想もつかない挙動を見せることがあります。

こうした性質は、工学や建築の専門家から注目され、多くの研究が進められています。

[7-1] ミウラ折り

ミウラ折りという言葉を聞いたことがある人も多いことでしょう。
これは、東京大学名誉教授で宇宙工学の専門家である三浦公亮(みうらこうりょう)氏が考案した折り方です。
紙に一定の折り目を付けることで、一瞬で紙を開いたり閉じたりすることができます。
特に1995年3月に打ち上げられた宇宙船「宇宙実験・観測フリーフライヤ」の太陽光パネルに採用されたことで有名です。
少ないエネルギーで効率よく開閉でき、また折り目が重ならないため、地図やパンフレットなど、さまざまな製品に応用されています。

また、東京大学の舘知宏(たちともひろ)氏は、折り紙の構造を建築設計に生かす研究を行っています。

Stiff and Flexible Sandwich Panel

[7-2] Stiff and Flexible Sandwich Panel

UTokyo OCWでは、舘氏の講義が公開されています。
折り紙にはどのような数理が秘められているのか、また折り紙に関する研究がいかに行われているのかが分かる講義です。

2. 科学としての折り紙:医療・生命科学

ものを効率よく折り畳む技術は、医療にも応用されつつあります。

北海道大学の繁富香織(しげとみかおり)氏は、細胞折り紙の研究を行っています。
細胞折り紙とは、細胞が持つ力を利用してマイクロプレートを折り畳み、微細な立体構造を作る技術です。
通常、細胞は培養すると平面状になりますが、立体構造を作ることで、実際の生体内に近い環境を作ることができ、医療や生命科学への応用が期待できます。

参考:繁富香織「細胞折り紙と医療」(生物工学会『生物工学会誌』 第94巻第5号、2017.5)

物を折る技術を持っているのは、人間だけではありません。

九州大学の斉藤一哉(さいとうかずや)氏らの研究チームは、ハサミムシの翅の折り畳みパターンを分析し、シンプルな幾何学的ルールで作図できることを解明しました。
この分析には、折り紙の幾何学も取り入れられています。
研究チームでは同様の手法で化石記録を調査し、同じ幾何学的ルールが2.8億年前から使われていたことを明らかにしました。
折り紙の幾何学により、生物の進化の一端が明らかになった事例です。

参考:昆虫界で最もコンパクト:ハサミムシの扇子の展開図設計法が明らかに(九州大学 PRESS RELEASE 2020.7.14 )

科学としての折り紙:コンピュータサイエンス

折り紙はコンピュータサイエンスの分野でも注目されています。

折り紙を作り、元に戻すと、紙に一定の折り目がつきます。
この折り目を表した図を展開図と呼びます。
展開図と作品には、対応関係があるはずです。
こうした点から、作品設計のためのプログラムが開発されています。

前ページで紹介したロバート・J・ラング氏の開発したプログラムTreeMakerは、作品の形をプロットすると、それに対応した展開図を出力します。
その展開図通りに紙を折ることができれば、(理論上)プロットした作品を作ることができるはずです。

参考:TREEMAKER(Robert J. Lang Origami)

反対に、作品を出力するプログラムもあります。
筑波大学の三谷純(みたにじゅん)氏が開発した折紙展開図エディタORIPAは、展開図を描くためのソフトウェアです。
描いた展開図が平坦に折り畳める場合、畳んだ後の形を推測して表示します。
三谷氏はこのほか、軸対象な立体折り紙を設計できるプログラムや、曲面を含む作品を設計するツールなども開発しています。

参考:公開ソフトウェア(Jun MITANI)

折り紙が数学に生かされ、数学で得られた知見がコンピュータサイエンスに生かされ、それが再び折り紙に生かされ…

現代の折り紙は、アートとサイエンスを行き交いながら、今まさに進化の真っただ中にあるのです。

関連書籍

折り紙に関する科学研究の知見を共有するため、数年おきに学会が開催されています。
International Meeting of Origami Science, Mathematics, and Education (折り紙の科学・数学・教育国際会議)、略してOSMEといい、各会で論文集を発行しています。