スライドデザインは「デザイン」とつくだけに美的センスを必要とする難しいものだと思われがちだ。
しかし決してそんなことはない。
基本に忠実に、全てのスライドを統一させるだけで見やすく美しいデザインになる。美しい模様やこだわりの配色、目を引く図などはその上に余裕がある範囲で考えるべきことなのだ。このチャプターでは基本となるルールを紹介する。まずは以下に記す条件を忠実に再現してみるといいだろう。
フォントは「読みやすく・適度に目立つ」が基本である。
あくまで参考としてではあるが、上記のスタイルを基準にすればスライド全体に統一感が生まれるだろう。
私の場合は、タイトルのみフォントを主張の強いものに変更することで、本文とのメリハリを持たせている。
使用するフォントはタイトルと本文共に日本語であればゴシック体、英語であればSan Serifが人気なようだ。
筆者と同じCuterの仲間達にも意見を聞き、以下に見やすいフォントの代表をいくつかまとめた。
フォントの種類によっては、文字のサイズ感も変わるので、適切なサイズ感まで調整が必要である。
また、WindowsとMacのOSで使えるフォントが違うので、それぞれいくつか紹介する。
Windows
日本語
英数字
Mac
日本語
英数字
*メイリオ・游ゴシック・Segoe UIなどはWindowsとMacで互換性があるので一般的に広く使われている。
色は原則として「3色まで」というのがスマートなデザインの基本ルールだ。
文章は白+黒+もう一色くらいに留めておき、図は黒と白に加えて3色ほどに制限すると見栄えが良いとされている。(写真などに含まれる色数は考慮しないものとする)
あまりにも色が多いと全体として注目する箇所のわからない、繁雑でうるさい印象のスライドになってしまう。基本は白黒で、強調したい箇所に色を設ける程度に抑える方が、見る人の興味を惹きやすくなる。
ちなみに、参考となるこちらの画像は九州大学が提供しているテンプレートで、文字のサイズのみそれぞれ少し大きくしている。
PowerPointテンプレートについては後ほど「便利テクニック:自分でテンプレートを作る」の章で述べる。
スライドのレイアウトは視線の流れを意識して作るといい。
優れたプレゼンテーションは聴衆の視線を意図した方向へ誘導し、「見せたい時に、見せたいものを見せる」が成立している。これによって、話の流れに合わせて必要な情報が聴衆の目に飛び込んでくるのだ。これは聴衆の集中力を維持することや、発表の理解度を高めることに効果がある。
ここでは、スライドを利用した視線誘導の基本を紹介する。
そして、一度決めた視線のパターンは繰り返し使うことで慣れてもらおう。
視線を意識した一般的な流れとして、2通りある。
1)Z型
2)F型
一度使ったレイアウトは何度も使うことが効果的だ。
反復して同じレイアウトを使うことで聴衆はその流れに訓練され、自然と見ることができるようになる。スライドに含まれる情報を見る順番を考えることに労力を割く必要が減るため、より内容そのものに集中してもらいやすくなるのだ。
その代わり、あまりにも長く同じレイアウトで変わり映えのしない画を続けていると発表そのものが単調に感じられ、飽きられてしまう。発表者側としても、最初は輝いていた聴衆の目が徐々に閉じていく様子は見たくないものだ。
その対策として、所々あえて違うレイアウトを使用したり、インパクトのある画像を使用するなどして「変化」というスパイスを加えることも重要だ。スライドデザインに含めたアクセントで聴衆の集中を取り戻そう。
発表につかうスライドはあくまで「補助」である。
好ましくない例としてよく見られるのが、
1)スライドに原稿全てを書き込み、発表でそれを全て読む
→文字が読める人を対象に作っているとしたら、これではスライドの価値が無い。それなら原稿をそのまま渡して読んでもらう方がいいだろう。
Cuter企画:「1年生向けプレゼン講座2023」講義資料より抜粋
2)文字がたくさん書かれているスライドを見せながら、違うことをしゃべる。
→視覚と聴覚から違う内容の情報が入ってくるため集中できない。
3)異常にカラフルで派手。不必要な図形。オブジェクトが散乱していてどこから見れば(読めば)いいかわからない
→聞き手の注意が散漫になる上、人によって見る箇所に差が出るため全体としての理解度にムラができる。なにより、話す方も聞く方もこんなスライドではしんどいと感じるだろう。このような発表が何人分も続けばもう最悪だ。聞き手の時間を頂き、何かを「伝えよう」としていることを常に意識してスライドを作るべきだ。
Cuter企画:「1年生向けプレゼン講座2023」講義資料より抜粋
ここで筆者が真面目に作成した「ダメなスライド」の見本を見ていただきたい。
内容もふざけているが、ここにある「ダメな例」は筆者の経験上実際に目撃した事例を詰め込んである。
ここまで極端な例は珍しいが、ダメな例を知ることで良し悪しの基準を頭に入れておこう。
アニメーション機能を使えば、スライドに動きをつけることができる。
実に楽しい機能だが、実際にアニメーション機能を使うかどうかは意見が分かれるところである。例として、スライドを変える際に使う「トランジション」というアニメーションがある。これはスライドの切り替わりにフェードアウトやカットインなどの動きをつけることで、スライドの変化を強調する方法である。しかし、トランジションを含めたからといって発表自体に影響があるわけではないため、あえて含めるかどうかは一考するべきだ。スライドにさりげなくトランジションを含めることで、一見「こなれた」発表に見えるが、あまりにも長かったり主張の強すぎるアニメーションを挟むと聴衆の集中力が削がれてしまう。また、PCの動作が重かったりすると、トランジションなどのアニメーション機能が不発に終わったりフリーズしたりしてしまう。そうなると発表にも影響が出てしまうため、リスクヘッジという意味ではアニメーション機能は余分に思える。どうしても使いたいのであれば必要最小限にとどめよう。「そのアニメーションに意味はあるか?」という問いを立てた上で、有効に使いたい。
他にも、スライド上のオブジェクトにもアニメーションをつけて順番に表示したりすることができる。しかし、これはスライドのコピーを作成して、背景色の図形でマスクすることで代用可能である。こうすることでアニメーションの順番を間違えたり、途中でフリーズしてしまい表示する必要のあるものが表示できないといったリスクを回避することができる。