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★手計算とRで学ぶ統計学: ノンパラメトリック検定

「なぜ統計学が必要か」という問いをひもとき,実践を通じて読者の方と統計学の心理的距離を縮めるガイドです。

ノンパラメトリック検定の概要

ノンパラメトリック検定は,母集団が特定の分布に従わないとわかっている観測データについて,それらが持つ度数や順位の情報から帰無仮説のもとで手元のデータが得られる確率を間接的に求める検定手法の総称です。

\(t\)検定や分散分析など,ここまで紹介してきた統計的仮説検定は母集団が特定の確率分布 (多くは正規分布) に従っていることを前提に行うパラメトリック検定でした。
しかし,実際の研究においては順序尺度
(※1) や名義尺度など,母集団が特定の分布に従わない質的データを扱うこともあります。母集団の分布がわからないので,観測したデータを使って直接母平均の差について検討することができません。
また,量的データであっても測定機器の誤作動や不真面目な実験参加者,あるいはデータの入力ミスなどに由来しない外れ値を含むデータの分析を行うことがあるかもしれません。このとき,パラメトリック検定を実施すると,本来あるはずの統計的に有意な差が検出できません。ノンパラメトリック検定はこのような状況で効力を発揮します。

このガイドでは,ノンパラメトリック検定の中でも特に使う頻度の高い独立性の検定,適合度の検定,マン・ホイットニーのU検定の3つを紹介します。

(※1) リッカート法 (例えば1〜5の選択肢から最も当てはまるものを回答させる) を用いて観測されたデータは厳密には順序尺度であり,パラメトリックを使って分析することはできません。しかし,実際には便宜的に間隔尺度だとして平均値や標準偏差を求め,パラメトリック検定を用いて仮説検定を行う場合が多いです。