生理はアートの主題として扱われることもあります。
現代芸術家で、東京藝術大学美術学部の准教授として活動するスプツニ子!さんは、2010年に、大学院の卒業制作として動画作品「生理マシーン、タカシの場合。」を発表しました。女の子になりたいタカシが、女装に留まらず生理も体験するために、腹部に鈍痛を与える電極や80ミリリットルの経血(女性の生理5日間の平均経血量)がでる生理マシーンを開発し、装着するストーリーです。映像作品のため、実際に生理マシーンを使って何かをするようなことはありません。
「生理マシーン タカシの場合/スプツニ子!」はこちらからどうぞ。https://youtu.be/gnb-rdGbm6s
スプツニ子!さんは「人間の負担をなくすテクノロジーでも、社会的・文化的背景に左右される」と話します。例えば日本企業の行うヘルスケア事業のうち最も多い割合を占めるのがメタボリックシンドローム対策ですが、メタボに罹患する殆どが男性です。政治・医療・テクノロジー分野においてはずっと男性の割合が大きかったというバイアスにより生じた偏りです。
実際、避妊薬でもある低用量ピルの認可には9年以上の歳月がかかっていますが、一方でバイアグラは約半年で認可されました。この期間の開きは特に医学界を中心に懐疑的な目で見られています。1990年代、日本は、低用量ピルの承認が遅い、生理後進国だったのです1 21。
また、生理の経血を用いて表現する「月経芸術家」と呼ばれるアーティストたちもいます。
生理の経血をつけてストリートを占領したり、キャンバスの上に座り、滴り落ちた経血で絵をかいたり、経血を口紅にしたポートレイトを発表したりしていますが、その作品群には「女性からみても不潔だ」「不快だ」など喧々諤々の議論がなされています12。
出典:「賛否両論を引き起こす’月経芸術家’ 彼女たちはなぜ生理の血で表現するのか?」
例えばこれです。こちらはイギリスのイングリット・バートン‐モイネ氏の作品です。どこに経血が使われていると思いますか?おわかりでしょうが、口紅です。びっくり。
2020年、講談社の開催するミスコンにすい星のごとく現れたのが、ハムスターの息子に生まれてよかったさん(通称ハ息子さん)です。
ミスコンにすっぴん・ジャージ姿で現れた彼女は、出場理由を「友達を作るため」と話しました。
その際持ってきた2枚の絵は、どちらも生理に関するものでした。生理でも学校のプールは休めないことや、低用量ピルは避妊薬というだけでなく生理痛緩和も担っているということを訴える作品です。
他にも、自宅の風呂場の壁に自らの経血でボーカロイドのキャラクター「初音ミク」と思われる女の子を描いています6。
また、アメリカの女子高生2人が作ったゲームも、生理のタブー問題に切り込むものでした。
その名も「タンポン・ラン(TUMPON RUN)」。銃で敵を撃つ代わりに、タンポンを投げつけるゲームです。
『ガール・コード』という本にも記載され、工学女子×フェムテックの魁的存在となりました9。
出典:「『生理のタブーをぶち壊そう』。’タンポン・ゲーム’で世界を変えた2人の女の子」
この女の子がキャップの男の子に投げつけているのがタンポンですね。