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★三大栄養素の一つ!脂質について知って欲しいこと: 複合脂質

私が毎日体に取り入れなければならない三大栄養素「脂質・糖質・タンパク質」。今回はその内ダイエッターが避けがちな脂質の重要性について見ていきましょう!

目次

複合脂質の種類

先ほど単純脂質は性質が単純という話をしましたが、対比させると複合脂質は性質が複雑ということになります。具体的には一つの脂質分子の中に疎水性の構造と親水性の構造を同時に持つという特徴があります。分類としては分子骨格(グリセロ脂質orスフィンゴ脂質)と頭部構造(リン脂質or糖脂質)の2通りがあります。

  • グリセロリン脂質

グリセロリン脂質の基本となる構造がホスファチジン酸です。グリセロール骨格に2分子の脂肪酸と1分子のリン酸を含みます。このリン酸頭部に結合する分子の種類によって、さらにリン脂質は多様になります。代表的なものがホスファチジルコリンです。私たちの細胞を形作る細胞膜はホスファチジルコリンを多く含んでいます。

ホスファチジン酸(左)とホスファチジルコリン(右):赤色がリン酸基、緑色がコリン基を表している。

 

  • スフィンゴリン脂質

代表的なスフィンゴリン脂質はスフィンゴミエリンになります。これも細胞膜に含まれている物質の一つで、特に神経細胞のミエリン鞘に豊富に存在し、神経細胞の働きに重要な分子となっています。

スフィンゴミエリン(左)神経細胞(右):青い楕円状の構造がミエリン鞘を示している。

これらリン脂質は普段の生活では名前を耳にすることはないと思います。しかし、生命はみな細胞膜や細胞小器官の膜をリン脂質で構成しており、普遍的な存在ではあります。私たちの体の細胞一つ一つが形を保つためにはこのリン脂質が欠かせないということだけ、覚えておいてくださいね。

糖脂質(Glycolipid)はその名の通りに脂質に糖が結合した物質です。リン脂質と同様にグリセロ糖脂質とスフィンゴ糖脂質に分かれています。糖脂質は細胞膜の外側に存在しており、細胞外環境とのやりとりに重要な役目を担っています。

・グリセロ糖脂質

代表的なグリセロ糖脂質を挙げるとジアシルグリセロールに単糖であるガラクトースが結合したモノガラクトシルジアシルグリセロール(MGDG)があります。

このグリセロ糖脂質は藻類や陸上植物等の光合成を行う生物に広く存在する物質で、特に光合成を担う葉緑体の中に存在するチラコイドという部分の膜は、このMGDGが約半分を占めています。このことから、MGDGは地球上で最も多く存在する極性脂質だと言われています。野菜を食べている私たちの身体には日々たくさん入ってきているわけです。

さて、MGDGのような糖が一つくっついたものが糖脂質の全てでしょうか?違います。私たちの細胞膜に存在する糖脂質の頭は糖がいくつも連なり、枝分かれすることで、「糖鎖」という構造をとります。

・スフィンゴ糖脂質

糖鎖を頭部にもつ糖脂質の代表はガングリオシドになります。ガングリオシドの一つであるGM3は糖が3つ連なったスフィンゴ糖脂質で、脳神経系に非常に豊富に存在し、聴覚や行動領域に関わっていると考えられています。

…え?糖鎖といったってたった3つじゃん、ですと?ではこれまたガングリオシドの一種、GQ1bはどうでしょう。

なんじゃこりゃ…

何よりも興味深いのはこの複雑な糖鎖構造様式にはある程度の個人差があるということです。これが人の免疫性能に影響を及ぼします。(この先を話すと長くなるので割愛させていただきます…)

脂質よもやま話⑤

 誰にでも輸血できる血液型と誰に輸血されても良い血液型 

せっかく糖鎖の話をしたのでここで豆知識を一つ。

血液型は赤血球の表面についている糖鎖の種類によって決まります。糖鎖のA型糖鎖を合成する遺伝子を持っていればA型に、B型糖鎖を合成する遺伝子を持っている人はB型に、両方持っていればAB型、遺伝子を二つとも持っていない人はO型となります。

さて、輸血の際、自分が持っていない糖鎖を持つ血液型を輸血されると、身体は毒が入ってきたと認識して攻撃してしまいます。このために血液型が利用されているわけです。

興味深いことに、O型赤血球はA型糖鎖もB型糖鎖も持っていないため、「どの血液型の人に輸血しても問題はない」ことになりますし、AB型の人は「どの血液型の人から輸血されても良い」ことになります。もちろん、血液型はA,B,AB,Oだけではなく、rhプラス型/rhマイナス型など他の要素も関わってくるため、この理論が必ず当てはまるわけではありませんが。そのため相手(患者)の血液型がわからない時には、とりあえずO型・rhプラス型が輸血されます。