「M蛋白血症」というのは、
血清中にM蛋白が認められる病気の総称です。
症状には、骨痛(特に腰痛)や貧血、全身倦怠、息切れ、めまいなどがあります。
<”M蛋白”とは>
M蛋白とは、均一な分子構造を持つ免疫グロブリン(抗体)のことです。
体の中には様々な抗原に対する様々な免疫グロブリンが形質細胞から作られて存在していますが、
M蛋白血症ではまったく同じ免疫グロブリンが異常に産生されます。形質細胞(B細胞系)の腫瘍です。
↑ 血清の電気泳動
上:正常 下:M蛋白血症(免疫グロブリンが含まれるγ-グロブリン分画が増えている)
CC-BY-SA 4.0 / File:Serum protein electrophoresis normal and paraprotein.svg / wikipedia
<免疫血清学的検査>
増殖しているM蛋白の種類を決めることで、さらに細かい分類に分けることができます。
種類の決定には免疫電気泳動法が用いられます。
↑免疫電気泳動の図
黒い帯のようなものはそれぞれ、血清中に含まれる蛋白です。
M蛋白血症の人の血清を用い、免疫電気泳動を行なうと増殖している蛋白の帯が、正常血清より太く濃く出現してきます。
これによって各免疫グロブリンの種類とそのH鎖(γ、α、μ) or L鎖(κ、λ)の決定を行います。
※L鎖のものは、ベンス・ジョーンズ蛋白とも呼ばれます。分子量が小さく、血清に残らず尿中に排出されます。
ベンス・ジョーンズ蛋白はM蛋白血症に特有です。
<分類>
M蛋白血症は、大きく悪性と良性にわかれます。
悪性
・多発性骨髄腫…高齢者に多く、骨髄中で異常な形質細胞が増殖するため正常な造血が抑制されます。
IgG、IgA、IgD、IgEのいずれかが増加し、他の免疫グロブリンは低下します。
・原発性マクログロブリン血症…増加するM蛋白はIgMです。
・H鎖病…まれな病気で、増殖するM蛋白はH鎖(γ、α、μ)です。
良性
・リンパ系腫瘍によって増殖する場合
・感染症、膠原病、癌、肝硬変などによって増殖する場合