出血傾向とは、
些細な原因によって出血しやすく、止血しにくい状態のことを言います。
出血傾向や出血性疾患の原因は、大きく4つに分けれます。
①血管異常
②血小板異常
③凝固異常
④線溶異常
血小板の異常は大きく
量の異常 と 質の異常 の2つに分けられます!
【量の異常】
<血小板の減少>
血小板が10万個/μL以下になったときのことを血小板減少症と言います。
例)
●偽性血小板減少症
…血小板の数を測定するときに、EDTA入りの採血管を用いると、血小板が
凝集して機械で数をカウント出来なくなることで、見かけ上減っている
ように見えます。病気ではないですが、採血管の種類も重要ですね
●ファンコニ貧血
…先天性の再生不良性貧血です。常染色体優性遺伝で(メイ・ヘグリン異常)、
血小板減少の他にも好中球にデーレ小体(青色の封入体)が見られたり、
巨大血小板が出現するという特徴があります。
●特発性血小板減少性紫斑症(ITP)
…自分の血小板に体する抗体(PA-IgG)ができてしまい、脾臓などに
取り込まれて破壊されて減ります。急性型と慢性型があり、
急性型は子どもに多く、慢性型は女性に多いです。
●血小板減少性紫斑症(TTP)
…全身の細小血管に血小板血栓が多発してしまい、血小板が消費されて
減少が起こります。血小板の血栓なので、凝固因子などは消費されません。
<血小板の増加>
血小板が40万個/μL以上になったときのことを血小板増加症と言います
例)
●本態性血小板血症
…血小板系、特に巨核球の過形成が起こります。
【質の異常】
<先天性>
例)
●ベルナール・スーリエ症候群
…血小板膜糖蛋白 GPIb/Ⅸ/V複合体が先天的に欠損しているためにvWFに
結合できないという、血小板の「粘着能」の異常があります。
●グランツマン血小板無力症
…フィブリノゲンの受容体である血小板糖蛋白 GPⅡb/Ⅲa複合体が先天的に
欠損しているため、フィブリノゲンを橋渡しできず血小板凝集ができません
(凝集能の異常)。
●ストレージ・プール病
…血小板のα顆粒や濃染顆粒、その含有物質が欠損する病気です(放出能異常)
●ウィスコット・アルドリッチ症候群
…造血細胞の細胞膜に異常があることで、血小板にも異常が出てきます。
<先天性>
例)いずれもきわめてまれだそうです。
●遺伝性出血性末梢血管拡張症
…皮膚や粘膜の毛細血管の内皮細胞が薄く、簡単に破れてしまいます。
(常染色体優性遺伝)
●エーラース・ダンロス症候群
…全身のコラーゲンが不足&異常が起きるため、血管の支持組織が弱くなり
出血しやすくなります。出血以外にも、脱臼が多く起こるそうです。
<後天性>
例)
●アレルギー性紫斑症(シェーライン・ヘノッホ紫斑症)
…溶連菌感染などに反応して、全身にアレルギー性血管炎が起こることで
紫斑ができてしまいます。
●老人性紫斑症
…加齢によって血管周囲のコラーゲンが不足し、毛細血管が破れやすくなります。
<先天性>
例)
●血友病
…凝固因子の遺伝子に異常があるために、凝固因子の活性化が低下し、
うまく血液凝固ができない病気です。
遺伝子の異常はX染色体上にあり、多くの場合男性で発症します。
ヨーロッパのある王族では、血友病が多く発症する一族があるそうです。
血友病にはAとBの2種類があります
・血友病A:Ⅷ因子の遺伝子異常
・血友病B:Ⅸ因子の遺伝子異常
<後天性>
例)
●ビタミンK欠乏症
…Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子の活性に必要なビタミンKが不足することによって、
活性されず、皮膚や粘膜で出血が起こりやすくなってしまいます。
●肝疾患
…大部分の凝固因子は肝で合成されるため、肝疾患(肝硬変や劇症肝炎など)で
産生が低下してしまいます。
<先天性>
例)
●先天性α-プラスミンインヒビター欠損症
…この病気は日本で発見されました。α-プラスミンインヒビター欠損に
よって線溶がどんどん進んでしまいます。常染色体性遺伝で、
外傷や打撲後に後・再出血や、深部の出血がみられます。
①~④の異常が合体している病気もあります!
<②血小板(機能)異常+③凝固異常>
例)
●フォン・ウィレブラインド病
…血小板膜糖蛋白 GPIb/Ⅸ複合体とコラーゲンとの結合を橋渡しする
フォン・ウィレブラインド因子が先天的に欠乏しているため、
血小板がコラーゲンに粘着できません(粘着能の異常)。さらに、
Ⅷ因子の異常も伴っています。皮下出血や粘膜出血などの症状が現れます。
<②血小板異常(減少)+③凝固異常+④線溶異常>
例)
●播種性血管内凝固症候群(DIC)
…様々な基礎疾患(悪性腫瘍や重症の感染症など)によって、血管内の凝固系
が活性化され、細小血管内で微小な血栓が多発する病気です。
そのため、血小板や凝固因子は消費され減少します。