「四診」で患者さんの全容を明らかにしますが
機械ではなく 五感 を使う以上、
お医者さん間でモノサシのズレは生じてしまいます。
しかし、患者さんがどういった「傾向」にあるのか
については、お医者さん独自ではなく共通したモノサシがあります。
これらのモノサシを使うことで、
患者さんのおおよその病態カテゴリーを振り分けてしまいます。
有名な3つのモノサシについて、見てみましょう。
漢方医学を知る上で重要となるのが「陰陽論」ですが、
この陰陽論から派生したもう一つの尺度が「虚実」です。
「虚(きょ)」とは
〈気血水〉の考え方的には、気血の量が少なく局所の反応に対する戦闘力が弱い状態のことで、身体の線が細く、胃腸の調子が悪かったり、血行が悪かったりする見た目が該当します。
「ちびまる子ちゃん」で言う山根くんです。
「実(じつ)」とは、
〈気血水〉の考え方的には、気血の量が多く戦闘力が強い状態。要するに「血の気が多い」状態のことで、体格ががっちりして、食欲旺盛な見た目が該当します。
「ちびまる子ちゃん」で言う小杉です。
このように、「虚実」の概念は、まさに一番「患者さんの見た目(体質)」を表しているといえます。ぱっと見でも分かるこのような特徴(症状)は「虚証」「実証」という名前で分類されます。
そして、漢方薬には虚証向きの薬があれば、実証の人に合う漢方薬もあります。
しかし、そうはいっても
世の中には虚実どっちつかずな 中肉中背な人 が圧倒的に多いです。
その場合は
薬効穏やかで、副作用の危険も少ない「虚証」向けの漢方薬が選択されます。
病気の原因が身体のどこらへんにあるかを示す概念です。
体の「表」面近くに邪気がある状態なら、まだ症状は軽く、それよりも奥の方(=裏)まで入り込まれていると症状が重い、といったイメージです。
それぞれ見ていきましょう
「表(ひょう)」
体の表面を指します。皮膚が想像しやすいですが、体内でも体の表面に近かったら「表」と呼ぶようにしているので、筋肉・骨・喉なども含まれます。
邪気が「表」にあると診断されると「表証」に分類されます。
風邪のひきはじめや症状の初期段階ですので、早期治療により比較的治りが早いです。
「裏(り)」
体の深いところを指します。消化管や臓器・脳などが含まれます。邪気がそこら辺まで到達した状態を「裏証」と呼び、臓腑がうまく機能していないなど、症状としても重いことが多いです。
「裏証」はさらに虚実・寒熱によって四つに分類され、それぞれで治療方針や処方される漢方薬が違います。
一般の病気のほとんどは「裏証」です。
このように
病気の段階を、体の表面からの入り込み具合でとらえるのが「表裏」です。
また、表と裏のちょうど真ん中の部分、横隔膜の上下にある臓器(肺や肝)に邪気がある状態は「半表半裏(はんひょうはんり)」と言い、この証であっても、また治療方針が違います。
体温のことかな
と思いがちですが体温の話ではなく
「からだが熱っぽく/冷たく感じる」ことに焦点を当てた概念です。
この場合の治療の目的は
「からだが寒くもなく暑くもなくちょうどいい感じ」にすることです。
「寒(かん)」
寒気や冷えを感じることです。どちらかというと虚証体質な人がなりやすいとされています。
この寒は「虚実」でさらに細かく分かれます。
虚寒
…「気」が衰えて身体を温められなくなる原因を指します。手足の冷えや下痢などの症状が出てきます。
実寒
… 寒邪(かんじゃ)の攻撃を指します。これが原因で、悪寒や頭痛・腹痛などが表われます。
「熱(ねつ)」
熱っぽく、身体がほてることです。どちらかというと実証体質な人がなりやすいとされています。
この熱も虚実で細分化されます。
虚熱
… 循環させる「血」や排泄する「水」が不足して、身体に熱がたまっていく原因を指します。口は乾くけど水分は欲しくない状態や、午後になるとなぜか熱っぽい症状が出ます。
実熱
… 火邪(かじゃ)の攻撃を指します。これが原因で、発汗や目の充血、口の乾きが症状として出てきます。
これらを駆使し、おおかたの方針が付いたところで、次は治療です。