一つ一つの生薬の性質は異なりますが
それらの分かりやすい分類に「五性」と「五味」というものがあります。
「五性」 とは
温度に関わる性質で、
寒(かん)・涼(りょう)・平(へい)・温(おん)・熱(ねつ)
の5つになります。
考え方は、自分の状態と反対の性質を選んで服用することで、
基本と同じく 「バランスを取る。」 というもので、
例えば体が冷えて、気や血のめぐりが悪くなった時は、「温」や「熱」の性質の生薬を選び、逆にのぼせ証や血圧の高い人には「寒」が選択されます。
「五味」 とは
味に関わる性質で、
辛(しん/からい)
酸(さん/すっぱい)
甘(かん/あまい)
苦(く/にがい)
鹹(かん/しおからい)
の5つになります。
「なんで味…?」と思いますが、単なる味ではなく、それぞれは 5種類の効果の特徴を表しており、またそれぞれの特徴は、ある臓器( 五臓 のどれか)に特に効く、という考えが東洋医学に存在します。
そこらへんを以下のテーブルにまとめました。
これら2つの性質は、生薬だけなものではなく、
普段食べたり飲んだりする普通の食事にも備わる性質です。
同じ植物であっても 部位によって生薬の名前や効果が異なるのはよくある話です。
例えば 桑(くわ) では
葉 → 「桑葉(ソウヨウ)」 : 抗菌効果
枝 → 「桑枝(ソウシ)」 : 関節痛に効果あり
根の皮 → 「桑白皮(ソウハクヒ)」 : 冷えに効果あり
実 → 「桑椹(ソウジン)」 : 肝や腎の機能を高める効果あり
のように、部分によって全く目的が異なります。
逆に
単独でも多くの薬効があるものも存在し
代表的な ドクダミ は、その薬効の多さから
生薬では「十薬(ジュウヤク)」という名前が付けられます。
生薬は、働きの強さに応じて
上薬(じょうやく)
中薬(ちゅうやく)
下薬(げやく)
の3つにランク付けされています。(三品分類 といいます)
多くの漢方薬は、上薬を中心にして配合されます。
上薬 が最も作用が強い。と思いがちですが
実は作用が強く即効性がある生薬は「下薬 」に分類されます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
上薬
全身の状態を整える生薬で、長期的な毎日の服用で体質の改善を図る
副作用はほとんどない
中薬
穏やかな作用で、新陳代謝の活性化を図る
用法用量を守れば副作用の心配もナシ
下薬
作用が強いため、即効性はあるが副作用のリスクも高い
このように、どんな作用の生薬を高いランクに位置付けているかからも、東洋(漢方)医学の「全体をバランスよく調和させる」治療指針がうかがえます。
使われる生薬の、配合後のそれぞれの役割に関して、
君臣佐使(くんしんさし) という考え方があります。
君薬 は
治療の中心となる生薬で、主に上薬が用いられます。
臣薬 は
君薬の作用をサポートする役割があります。
佐薬 は
君・臣薬を補助しながら、症状を抑えます。
使薬 は
作用を調整し、漢方薬を服用しやすくします。原則下薬が使われます。
例外はもちろん存在しますが
このような役割を念頭に配合することで、漢方薬が作られます。