こんにちは.理系Cuterの⾼濱です.私は読書のテクニックを学んだことはあまり無いですが,博士課程に入って書く機会が増えてから,文章の読み方に生じた変化をふまえて紹介させていただきます.
〈読む目的〉
読む目的が明確になっていればいるほど効率的に読むことができると思います.レポートなど資料を作成したり論文を書いたりする際の「調べもの」として書物を読む時は効率的に読めるということは皆さん体験されていると思います.誰かに話すことを意識しながら読むときも,内容が頭の中で整理しやすくなりますね.
一方,目的が明確になっていない時には,スラスラと本を読むのが難しい時があります.読みながら眠くなってくるときは,その時点で読む必要はないものと判断して私は読むのを止めます.
〈読み始め〉
いかなる場合もまずは⽬次を読むようにしています,ここで内容や,⾃分が読むべき場所を⼀度,⽴ち⽌まって想像します.ひとまず形式的に毎回これをやり,うまくいけば,「あまり読まなくてもいい場所」が事前にわかりますし,「集中して読むべき場所」も想像できます.
読むべき場所がわかったら,そこに向かってどういうアプローチで読み進めるかが次の問題ですが,目次とあわせて「文章の構成」にも意識を向けるのは有効だと思います.読み慣れていないジャンルや分野の場合,ピンポイントで知りたい箇所を読んでも,使われている⾔葉の背景がわからないので頭に⼊ってきません.こういう時は,構成(意味のつながり,論理)をヒントに読み解くというアプローチが可能です.
段落(パラグラフ)は主張ごとにまとまっているという暗黙のルールがあるので,「自分が知りたいことはこの段落の頭と最後だな」と意識しながら読む,ということが専門書や論文を読む時には効果的です.これはパラグラフリーディングと呼ばれているようです.いくつかの文の集まりである段落を一つの意味(一つの文)で捉えなおすという操作なので,時に思い切った捨象(すなわち抽象化)が必要です.自分で意識しながら書いてみるとこうした構造を捉えやすくなるので,レポートや卒論などの機会に試してみるといいと思います.
〈多読について〉
多読をしたいという相談もありますが,私はたくさん読もうとすることよりも読む対象を減らす事の方を優先すべきだと思います.後ろの方に書きましたが,私は『イシューからはじめよ』という本を読んでから,なるべく「読む価値のある本,文章」を絞ってから読みたいと考えています.
〈読まない箇所に対する意識〉
読まない箇所があるのはもったいないように思えるという相談もありましたが,「読まない理由づけ」をすることで回避できると思います.読む前に目的を明確にすることで,そういった意識は薄れていくのではないでしょうか.
ちなみに私は,読まない箇所があるどころか,買ったけど全く読んでいない本が⼭のように⾃宅にありますし,それらも「読むべき時が来たら読む」ぐらいにしか思っておらず,開き直りというか,積極的に肯定している感じです.一年ぐらい平気で積んでおいて,その後,読む理由が見つかって読み始めることもよくあります.
〈読書に関連した読書や学習の履歴〉
情報の集め方
本を読む=情報を集める 前段階でどういう準備をするかという事に関しては,安宅和人さんの『イシューからはじめよ』英治出版(2010)が最も参考になりました.Youtubeで10-20分くらいでこの本を紹介している動画もあります.「たくさんやる」のではなく「やることを減らす」ための考え方が紹介されています.研究,仕事,読書などに役立つと思います.
論理や構成を捉えるための訓練
論理を学ぶ機会は大学でも(特に理系だと)あまり提供されていないと思います.私は野矢茂樹先生の入門書を何冊か読んでトレーニングしました.『新版 論理トレーニング』が私のお気に入りです.
構成については,『なぜ科学はストーリーを必要としているのか』慶應義塾大学出版会(2018)がわかりやすかったので理系の方にお勧めします.ついでに,抽象化能力が文章を読む時に役に立つと上で述べたので,最近出た細谷功著『具体⇔抽象トレーニング』PHP(2020)も紹介しておきます.
本の集め方
本の集め方に関してはMicrosoft日本法人の元社長の成毛眞さんの『本棚にもルールがある』を参考にしています.興味がある本を買うことに対する心理的ハードルが下がりました.また,いろいろなジャンルの本に興味が向くようになり読書の幅は広がった実感があります.部屋の中で本をディスプレイするときの考え方に指針ができてから部屋が片付き,気が楽になったなどの変化もありました.
速読について(あまり参考にならない)
高校3年から大学1年まで,速読のトレーニングをしましたが初級ぐらいのレベルで止めました.高校の時に『新書1冊を15分で読む技術-スーパー速読1週間』井田彰 著祥伝社新書(2009)を読んで自主トレをした後,大学1年の時に著者のセミナーに(大金をはたいて)一度参加しましたが,読むスピードが上がる一方で理解(わかったという感覚を伴う読み)のスピードを上げる方法がわからず諦めました.文字をそこそこ速く追う事はでき,大学受験では問題文を読むのに役に立ちましたが,最近の生活や研究で役に立っている実感はありません(比較対象がないだけかも).文字を追えることと理解できることの間のタイムラグ,ギャップを埋めるためのトレーニングをいつか再開したいと思っています.