ここでは、臨床的に重要な Esherichia coli について説明します。
Esherichia coli
ブドウ糖、白糖、乳糖を分解して、酸とガスを発生する(ただし、一部の病原性大腸菌は例外あり)
大腸菌で重要なのは、食中毒や下痢症などの原因となる腸管感染症で、一般的には5種類に分類されます。
・・・・・・・・・・余裕があれば覚えましょう。
特に重要なものを下にまとめます。
腸管出血性大腸菌 (EHEC)
血清型 O157:H7
ソルビトール非分解あるいは遅分解
ベロ毒素(=志賀毒素)を産生
水様性下痢に続いて鮮血便を排出
ベロ毒素による溶血性尿毒症症候群 (hemolytic uremic syndrome; HUS )や脳症などの合併症を起こすこともある
3類感染症に分類されている
たくさんの集団食中毒の原因となった、有名なO-157です。
ユッケからの食中毒の原因となったのもこの仲間で、O-111です。
みなさん、生肉には気をつけましょう。
本属の中で、ヒトに感染するのは、Y.pestis, Y.enterocolitica, Y.pseudotuberculosis です。
Yersinia pestis
1類感染症に分類されるペストの病原体
本来はネズミなどの野生のげっ歯類に寄生しているが、ノミなどの昆虫を介してヒトに感染
非運動性
「生」に対して圧倒的勝利を勝ち取った「死」が踊っている姿
わずか5年間でヨーロッパの人口の半数が死亡したとされています。
恐ろしい病気ですね・・・(゚Д゚;)
ー図はWikipediaより引用
Yersinia enterocolitica
食中毒の原因菌
運動性とVPテストは培養温度によって変動:37℃で陰性、25℃で陽性(⇔Y.pestis)
Yersinia pseudotuberclosis
ヒトに猩紅熱様、泉熱様症状を起こす
運動性:37℃で陰性、25℃で陽性(⇔Y.pestis)
赤痢の起因菌になる細菌
膿粘血便(出血性の激しい下痢)症状を示す
血清学的に、
S.dysenteriae (A群) 志賀赤痢菌
S.flexneri (B群) Flexner 赤痢菌
S.boydii (C群) Boyd 赤痢菌
S.sonnei (D群) Sonne 赤痢菌
の4群に分類されています。
Shigella 属の性質はよく出題されるので、前頁の表をよく覚えましょう。
Salmonella は大きく次の三つに分けられます。
・ヒトにチフス様疾患を起こす菌(チフス性サルモネラ):S.Typhi, S.Paratyphi A
・食中毒あるいは急性胃腸炎を起こす菌:S.Enteritidis など
・主として動物に感染し、ヒトには病原性を示さない菌
チフス性サルモネラは特に、その他のサルモネラと性質が異なることが多いので気を付けましょう。
Salmonella Typhi, Salmonella Paratyphi A
表:サルモネラ属の生化学的性状の違い
リジン脱炭酸反応は、前のページで陽性と書きましたが、S.Paratyphiでは陰性となります。
このように、”大きく分類すれば陽性”でも、中にはその枠組みから外れた性質をもつものもいるのです。
3類感染症
極期には徐脈・バラ疹・脾腫を呈する
”その他”にするのはあんまりかもしれないけど・・・
Klebsiella pneumoniae
運動性なく、莢膜をもつ
K抗原の鑑別に莢膜膨化反応が用いられる
呼吸器や尿路感染症の原因となることが多いが、ほとんどすべての部位でこの菌による感染症が発現する
Serratia marcescens
日和見感染の原因菌であり、院内感染が問題となっている
DNase産生
非拡散性赤色色素(プロディギオジン、ピリミン)産生
語呂:深紅の セラチア (深紅:赤色色素産生)
Proteus vulgaris
日和見感染の原因菌
遊走性(スウォーミング)→胆汁酸塩、窒化ナトリウムなどにより阻止
X変異株がワイル・フェリックス反応に利用される