この属は、
①胃腸炎・下痢症を起こすもの・・・コレラ菌 (Vibrio cholerae) 、腸炎ビブリオ ( Vibrio parahaemolyticus)
②敗血症、創傷感染症を起こすもの・・・Vibrio vulnificus
に大別できます。
Vibrio属かな?と思ったらまず、アルカリペプトン水で増菌し、TCBS寒天培地(またはビブリオ寒天)で分離培養します。
TCBS (ビブリオ寒天)培地における集落の色
その後、さらに詳しい鑑別を行います。
主なVibrioの鑑別性状
+: 90%以上が陽性、-: 90%以上が陰性、d: 11~89%が陽性、(d): 11~89%が遅れて陽性
かなり内容を削りましたが、重要なポイントです。
上3つの性状は腸内細菌との鑑別において、とても重要です。
塩化ナトリウム加ペプトン水での発育もよく問われますので覚えましょう(8%での発育 V.cholerae(-)⇔V.parahaemolyticus(+))。
糖の分解についてはよく問われます。V.parahaemolyticus が乳糖も白糖も分解しないことはよく覚えておきましょう。
ちなみに、表には載っていませんが、極単毛を持ち、運動性であること、カタラーゼ陽性であることも重要なポイントです!
Vibrio cholerae (コレラ菌)
コンマ状の細菌
コレラ( 3類感染症)の原因菌であり、コレラ毒素を産生。水や魚介が原因であることが多い。
米のとぎ汁様下痢を発症。
O1血清で凝集する。
8% 塩化ナトリウム加アルカリペプトン水での発育なし⇔V.Parahaemolyticus。
・抗原の組み合わせによる分類:小川型、稲葉型、彦島型の3種
・生化学的性状による分類:アジア型、エルトール型
Vibrio cholerae non O1 (非O1コレラ or NAG ビブリオ)
生化学的性状はコレラ菌に同じ。
食中毒の原因菌。
O1血清で凝集しない。
Vibrio parahaemolyticus (腸炎ビブリオ)
まっすぐなグラム陰性桿菌
感染型食中毒の原因となる (海産魚介類)
乳糖、白糖をともに分解しない。
8% 塩化ナトリウム加アルカリペプトン水での発育あり⇔V.Cholerae。
Vibrio vulnificus
沿岸海水に生息。
肝硬変などの基礎疾患のあるヒトに経口感染あるいは創傷感染を起こす。
劇症型では軟部組織壊疽、敗血症やショック死を起こす。
海水温の高い西日本で症例が多い。
Haemophilus influenzae
莢膜をもつ。
分離にはウサギまたはウマ血液を使う。×ヒツジ
発育にX,V因子を要求する。
衛星現象を示す。
髄膜炎、急性気管支炎の原因菌となる(×インフルエンザ)。
BLNARと呼ばれる多剤耐性のインフルエンザ菌が問題となっている。
◆ X,V因子とは?◆
X因子:プロトポルフィリン
V因子:NAD or NADP
ヒツジ血液には、V因子を破壊する酵素が多く含まれている⇒だから分離にヒツジ血液が使えない!
◆ 衛星現象って?◆
ある微生物の周りに、あたかも衛星のように他の菌が発育している現象。
H.influenzaeに限った現象ではない。
中心に存在する菌が、自ら使いきれない量のV因子を産生するために起きる現象。
Haemophilus ducreyi
軟性下疳の原因菌
Aeromonas属
食中毒原因菌
日和見感染症として敗血症、創傷感染、心内膜炎などを起こす。
Plesiomonas属
食中毒原因菌
極多毛の叢毛性鞭毛をもつ。