嫌気性菌は大きく有芽胞菌と無芽胞菌に分けられます(詳しくは「細菌の分類」を参照)。
酸素の多い環境では増殖できないので、嫌気性菌の培地にはたいてい還元剤(チオグリコレート、システイン)などが加えられています。
検体の輸送にはケンキポーターなどが使用され、培養はガスパック法、嫌気ボックス法(H2:10%, CO2:10%, N2:80%)で行われます。
嫌気性菌はアミノ配糖体を除き、頻用されるほとんどの薬剤に高い感受性を示します。が、Bacteroidesはβ-ラクタマーゼを産生し、β-ラクタム剤に強い耐性傾向を示します。
◆グラム陽性、無芽胞の嫌気性球菌◆
名前の最後に”コッカス”が付く細菌が多い、と覚えましょう
口腔、腸管、泌尿生殖器、皮膚の常在菌
◆グラム陰性、無芽胞の嫌気性球菌◆
Veionella属
Neisseriaに似ている
糖の発酵なし、硝酸塩を還元
◆グラム陽性、無芽胞の嫌気性桿菌◆
名前の最後に”バクテリウム”のつく細菌が多い、と覚えましょう
乳製品やヒトの腸管に存在するもの多い
◆グラム陰性、無芽胞の嫌気性桿菌◆
Bacteroides属
20%ウシ胆汁に耐性
炭水化物を発酵、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、コハク酸を産生、悪臭あり
β-ラクタマーゼを産生するが、セファマイシン、オキサセフェム、カルバペネムは分解せず
Bacteroides feagilis
ヒト腸管の細菌叢には1%以下しか存在しない
特に頻用される化学療法薬に耐性傾向が強い
カルバペネムを分解できるメタロβ-ラクタマーゼを産生する菌株が発見されている
◆嫌気性芽胞形成桿菌◆
Clostridium属
芽胞を形成できる嫌気性桿菌はすべてClostridiumに分類される
グラム陽性菌に類似した細胞壁構造を有している
耐気性の強い菌はBacillusとの鑑別が必要になるが、これらはカタラーゼ陰性である⇔Bacillus属
表:主要なClostridiumの性状
上の表に主なClostridium属の性状をまとめています。
パッと見て、C.perfringensは他の3つとの違いが多いと思います。これを中心に暗記するといいと思います。
リパーゼ反応陽性:C.botulinum
語呂:立派なのに ボツ (立派:リパーゼ反応陽性 ボツ:botulinum)
Clostridium botulinum
糞便・血清・推定原因食が検査対象
神経毒素を産出→毒素は80℃、30分または100℃、10分の加熱で容易に不活化される
食中毒、創傷ボツリヌス症、乳児ボツリヌス症の原因となる
Clostridium tetani
創傷部材料が検査対象
グラム染色にて端在性の大きな円形の芽胞を有し、いわゆる太鼓バチ状と呼ばれる特徴ある形態を呈する
強直性痙攣を起こす神経毒(テタノスパスミン)と酸素感受性の溶血毒を産生
Clostridium perfringens
ガス壊疽の疑いのときにきわめて重要な菌
日常検査で用いる培地ではほとんど芽胞は見られない
リトマスミルク培地で”嵐の発酵”と呼ばれるきわめて強いガス産生を伴った発酵が見られる
ゼラチン液化能が強い
Clostridium difficile
抗菌薬投与中に発症した下痢便が検査対象
2種類の毒素、トキシンA(腸管毒)およびB(細胞毒)を産生、毒素非産生株も存在
ヒトの消化管に生息→7~14%の成人の糞便からも無症状で分離される(毒素産生株であることも!)
ラテックス凝集反応を利用した検出キットも存在する
毒素産生のC.difficileの保菌者が抗菌薬投与を受けると腸内の固有細菌叢の乱れに乗じてC.difficileが異常増殖し、下痢や偽膜性大腸炎を起こす
院内感染症の原因菌としても注目されている