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★美味しいお魚を食べよう! 〜魚食の文化と科学〜: 青...?白...?赤...?

お魚について知ることで、より美味しくお魚を食べてもらうことを目的としたガイドです。

色が語る魚の種類や特性

青魚、白身、赤身赤魚... 

一般的に魚は色で分類されることがありますが、その色の由来について考えたことはありますか?青魚といえばサンマやイワシ、白身はタイなどの魚を想像するかと思います。実はこれらの表現はあくまで通称で、明確な決まりはないとされています。ただし、実際は色でその魚の種類や特徴を表しているので、知っておくと好みの魚や調理法を見つける際に役に立つかもしれません。

福岡の漁港で食べられるお寿司。

この写真で魚種を8種以上当てられる方はきっとお魚マニアです。

どれが赤身でどれが白身と呼ばれているでしょうか?

では、青魚はどれ?

これだけ幅広い魚種が簡単に食べられることは、わかりやすい生物多様性の恵みの例だと思います。

 

青魚とは

まず初めに、青魚について説明します。

青魚という単語は背が青い魚のことを指す通称で、主に回遊性で身が赤身の魚を指しています。明確な定義はありませんが、一般的に「アジ・サバ・カツオ・サンマ」などが青魚とされています。

青魚と呼ばれる魚の背が青い理由は自然選択による進化だと考えられており、背が青いことで上空から見た場合に青い海の色にカモフラージュすることで捕食を免れる効果があると考えられています。しかし現実的には、多くの海鳥は青魚を多く捕食していることから、その効果は完璧ではないようです。このように遺伝的に大きく離れた種がよく似た特徴を持つ様に進化する例は「収斂進化」と呼ばれており、その理由は類似した環境要因から受ける選択圧によるものだと考えられています。

赤身とは

魚の身は、赤や白という色で区別されます。赤身の魚というのは、文字通り身(筋肉)の色を指していて、外から見た表面上の色とは関係がありません。そのため、「青魚の身は赤い」などというへんてこな表現になってしまうのです。

魚の筋肉(身)に含まれる筋肉色素タンパクであるミオグロビンが多く含まれている筋肉は「血合筋」と呼ばれ、赤い色をしています。多くの動物では赤血球がヘモグロビンと呼ばれるタンパク質に酸素をくっつけて、身体中に酸素を運びます。筋肉まで運ばれてきた酸素は、筋肉中のミオグロビンというタンパクに移ります。筋肉が活動するためには多くのエネルギー(ATP)を酸素を使って合成しないといけないので、ミオグロビンが活動のために酸素を受け取り、使われるその時まで貯蔵します。ここで酸素を吸着する役割を果たすのが、ミオグロビンに含まれる鉄イオン(Fe2+)によるもので、魚肉全体で見ると赤茶色の色の由来でもあります。回遊魚は早いスピードで広大な範囲を移動する、いわば海のマラソン選手です。これを可能にするには、筋肉にたくさんの酸素を必要とするのでミオグロビン含有量が多くなります。結果として、赤みの強い筋肉となり、我々にとっては「赤身の魚」となるわけです。

マグロ(写真上3つ)は赤身の代表格だ。

猛スピードで長距離を移動するマグロの遊泳力は

身(筋肉)に含まれた大量のミオグロビンと血液のヘモグロビンによる活発な酸素の交換が可能にしている。

白身とは

赤身の意味がわかると、白身の魚についても想像がつくかもしれません。

赤い色をした血合筋が少なく、代わりにミオグロビン含量の低い普通筋は白い色をしています。つまり、この普通筋の比率が大きいものが白身魚とされています。これは回遊性ではなく、一箇所にとどまり、捕食などの際にのみ俊敏に動く魚に多く見られる特徴です。

具体例で言えばヒラメやハタなどが当てはまります。常に多くの酸素(=エネルギー)を必要とせず普段は省エネで活動している魚は白身であることが多いと言えます。これらの魚は決して動きが遅いというわけでなく、いざという時にはものすごい瞬発力を見せます。これは速筋という筋肉による無酸素運動によって起きる動きです。そのため、一瞬の速度は凄まじく速くとも持続はしません。

3枚におろしたキジハタの身。

白く輝いている。

徳島産の鱧(ハモ)を食べる機会に恵まれた。

ふわふわの白身には、酢味噌がよく合う。

白身魚は加熱後の臭みなどが少なく、味の主張が優しいため鍋の具材などとしても人気だ。

 

 

赤魚とは

他にも、スーパーなどのお魚コーナーをのぞいてみると、時折「赤魚」「アカウオ」といった名前で魚の切り身が売られていることがあります。実は、青魚と同じように、赤魚も見た目が赤い複数の魚種を指す俗称で、アカウオという名前の魚一種を指しているわけではありません。

赤い色をした魚は多く存在していますが、一般的に食用として「赤魚」の名前が使われているのは「アコウダイ」「アラスカメヌケ」「モトアカウオ」「チヒロアカウオ」などのカサゴ目の白身魚です。赤魚の体色が赤い理由の一つとして、日光の届きにくい深く暗い海で生活する魚にとっては、赤色が最も目立ちにくい色であることから、赤色の魚が生存に有利なのではないかという説が有名です。

それにしても「モトアカウオ」って名前...元アカウオ...  今も赤魚だよ~!!!

参考文献

“スーパーでよく見かける「赤魚」ってどんな魚なの?特徴や旬、おすすめレシピを紹介!”. トクバイニュース. 2021, 03, 13. (Web), <https://tokubai.co.jp/news/articles/4326>. Last accessed January 21, 2022.

消費者庁. “魚介類の名称ガイドライン”. 消費者庁. (Web), <https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200727_01.pdf>. Last accessed January 21, 2022.

オリーブオイルをひとまわし編集部. “赤魚とは?代表的な種類の「アラスカメヌケ」について詳しく解説!”. オリーブオイルをひとまわし. 2021, 10, 08. (Web), <https://www.olive-hitomawashi.com/column/2020/09/post-11807.html>. Last accessed January 21, 2022.

竹内 俊郎,  中田 英昭, 和田 時夫, 上田 宏, 有元 貴文, 渡部 終五, 中前 明, 橋本 牧. 水産海洋ハンドブック. 東京, 生物研究社, 2016, ISBN 9784915342738.

Fun Fact: 赤くても白身!?

一般的に、赤身の定義は身に含まれるミオグロビンの量とされています。そのため、見るからに赤い身の魚でもミオグロビンの量が少なければ白身魚と分類されます。

例えばサーモン

決して白くはありませんが、白身魚です。

 

他にも、ハチビキという魚の身も真っ赤ですが、同じ理由で白身魚に分類されます。