0. Home
1. イントロダクション
2. 競走馬の血統・基本用語
3. 資料の読み方
4. 資料からたどる名馬たち
4.1 血統表に頻出の馬
4.2 日本競馬を賑わせた外国馬たち
4.3 著者のイチオシ馬たち
5. はみだしよみもの
5.1 ダービーよりも人気のレース!?
5.2 日本の障害競走・超入門
5.3 サラブレッドと (の) 乳母馬
6. おわりに
7. 参考文献
スタッドブックはどの国のものでも,基本的に前半はまえがき,血統登録規則,馬名索引,後半に母名と生産された馬の名前 (不受胎,流産などの情報も含まれる),海外に輸出された馬の名前,という構成からなります。
実際のテキストを参照しながら読み方を解説します。これはKaramitaという馬が産んだ仔馬の情報をまとめた箇所です。
General Stud Bookより引用していますが,九州大学に所蔵されている血統資料はどれも以下の読み方をします。
最初にこれだけ見ても「何が書いてあるの?」と思う方がほとんどでしょう。そこで,細かく分解して読み方を確認します。
まず,この箇所は母馬の情報が記載されています。名前はKaramita, 毛色は鹿毛 (Bay),生年は1977年です。そして父がShantung,母がShahinaaz,Shahinaazの父がVentureであるとわかります。
その下にはKaramitaが1993年から1995年までに産んだ仔馬の情報が記載されています。
1993年の6月8日に父Darshaanの鹿毛の牡馬が生まれたこと,そしてその仔馬はKaranpourと名付けられアイルランドで調教されたことがわかります。1994年にはKahyasiと交配していますが,不受胎 (交配は行われたが何らかの原因で受精卵が発生しなかったこと) でした。そして1995年2月20日に父Kahyasiの鹿毛の牡馬が生まれ,Karasiと名付けられてアイルランドでデビューしたことがわかります。
なお,Karamitaは1995年の2月に亡くなっていることが記載されています。
右側には生産者の情報が記載されています。Karamitaの子どもたちはいずれもHis Highness the Aga Khan's Studs S.C. (アーガー・ハーン4世の所有する牧場) で生産されたことがこの資料からはわかります。
本文中には略語が当たり前のように登場するので,以下をご参照ください。
○毛色についての略語
b: 鹿毛 (Bay)
四肢は黒色,それ以外が黒茶色の毛色です。被毛 (体を覆う短い毛) は明るい赤褐色から暗い赤褐色まで多様ですが,長毛 (たてがみ,尻尾などの長い毛) は黒です。サラブレッドの中で一番数が多い毛色です。
代表的な鹿毛の競走馬はディープインパクト,オジュウチョウサン,ウオッカなどです。
このガイドで取り上げた競走馬の中ではトニービン,ウインドインハーヘア,メイショウドトウなどが鹿毛です。
blk: 青毛 (Black)
長毛,被毛ともに黒い毛色です。サラブレッドには少ない毛色だといわれています。
代表的な青毛の競走馬はシーザリオ,ビートブラック,ヴィルシーナなどです。
このガイドには青毛の馬は登場しません。
ch: 栗毛 (Chestnut)
全身が明るい茶色 (黄褐色),被毛は黄褐色,長毛は被毛より色が濃い馬も白に近い馬もいます。
代表的な栗毛の競走馬はオルフェーヴル,テイエムオペラオーなどです。
このガイドで取り上げた競走馬の中ではタイキシャトル,ディクタスなどが栗毛です。
dk b or br: 黒鹿毛 (Dark bay) or 青鹿毛 (Brown)
黒鹿毛は四肢は黒,長毛と被毛は濃い黒茶色をしています。青鹿毛は四肢も含めて全身が黒いですが,青毛と比較するとわずかに褐色が含まれ,黒鹿毛と比較すると被毛の黒みが強いというなんとも分かりづらい特徴があります。
判別が難しいのでdk b or brという表記なのかとつい考えてしまいます。
代表的な黒鹿毛の競走馬はウイニングチケット,シンボリクリスエスなどです。また,代表的な青鹿毛の競走馬はマンハッタンカフェ,サクセスブロッケンなどです。
このガイドで取り上げた競走馬の中ではブライアンズタイムが黒鹿毛,サンデーサイレンスが青鹿毛です。
gr: 芦毛 (Grey)
出生時は栗毛や黒鹿毛など白くない色 (原毛色) をもっていますが,成長に伴って白くなるのが特徴です。
代表的な芦毛の競走馬はオグリキャップ,ウインブライト,ゴールドシップなどです。
このガイドで取り上げた競走馬の中ではホーリックスが芦毛です。
roan: 粕毛
原毛色の中に白い毛が混在しています。年齢を重ねても真っ白にならないのが芦毛との大きな違いです。
日本の競走馬の毛色一覧に粕毛は存在していませんでした。なぜこの色が…と考えてしまいます。
現在,日本ではソダシやハヤヤッコなど白毛の競走馬が活躍する様子がよく報道されますが,1990年代までのスタッドブックには「白毛」という毛色の記載はありませんでした。
毛色については,JRAのウェブサイトでも画像付きで詳しく紹介されています。
○性別についての略語
c: Colt (3歳以下の牡馬)
f: Filly (3歳以下の牝馬)
g: Gelding (去勢された牡馬。せん馬)
h: Horse (4歳以上の牡馬)
m: Mare (4歳以上の牝馬)
rig: Ridgeling (停留睾丸 (通常の位置に睾丸が降りてきていない) がある仔馬)