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九州大学の資料とたのしむ競走馬の血統: サラブレッドと (の) 乳母馬

ギャンブルだけじゃない競走馬の魅力,お伝えします!

産みの母≠育ての母…のこともある

サラブレッドの生産現場では,母馬の死亡や育児放棄,母乳分泌量の不足などにより産みの母馬が仔馬に母乳を与えることができないケースがあります。その場合は人間の手による人工哺乳ではなく,別の馬を乳母としてあてがうことが一般的です。「ウマ娘 プリティーダービー」のアニメ1期でも,主人公であるスペシャルウィークには産みの母と育ての母両方がいたことが設定に反映されています。

乳母としてあてがわれるのは,サラブレッドではない性格の穏やかな品種の馬が一般的です。しかし,一部の牧場では経費削減やその年仔馬を生んでいない繁殖牝馬の活用を目的としてサラブレッドにホルモン処置を施して乳母としてあてがう事もあります。サラブレッドを乳母としてあてがう試みについてはJRA育成牧場が積極的に取り組んでいます。サラブレッドを乳母としてあてがわれた競走馬の中でも特に有名なのは,2020年のとんでもないレースローテーションが一部で話題となり,現在は福島競馬場で誘導馬として活躍しているヨシオです。ヨシオの母馬は母乳の分泌量が少なく,仔馬の発育に影響が生じたためホルモン処置を施されたサラブレッドの牝馬が乳母としてあてがわれました。その過程はJRA育成馬日誌ヨシオ本馬が執筆したコラム (netkeibaアプリでしか読めません…) で公開されていますが,本当に一筋縄ではいかなかったようです。

2022年夏頃のヨシオの様子。幼少期があれほど壮絶だったとは思えないほど元気に誘導馬としての訓練をこなす様子を見せています。
あとサムネイルのお鼻ドアップがかわいすぎる。

ちなみに,ブログが公開された2013年当時は仔馬の情報は公開されていませんでしたが,2021年にヨシオが初代アイドルホースオーディションのチャンピオンに輝いたことをきっかけに「実はヨシオは乳母に育てられたんですよ」という記事がJRAから公開されました。私たちが競馬場やテレビで見るあの馬も,実は乳母によって育てられたのかもしれません。