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九州大学の資料とたのしむ競走馬の血統: 著者のイチオシ馬たち

ギャンブルだけじゃない競走馬の魅力,お伝えします!

ページ説明

このページでは,一般的な知名度や競走成績とはあまり関係なく,著者自身が個人的に思い入れがあったり血統表で見るとちょっとニヤっとしたりする馬たちを紹介します。
他のページよりも熱量高めでお送りいたしますので,その点ご注意ください。

著者のイチオシ馬たち

マイネプリテンダーは父Zabeel, 母Giladah, 母父Mill leafという血統で,1995年11月12日にニュージーランドで誕生しました。
(掲載: NEW ZEALAND STUD BOOK VOL XXVIII 1997 p. 451)

競走馬としては4戦して1勝,その後屈腱炎 (骨と筋肉をつなぐ腱に炎症が起きること。直接命を脅かす病ではないが,完治が難しいことから「競走馬のガン」とも呼ばれる) で引退を余儀なくされました。しかし,5頭の産駒のうち4頭が重賞を勝つ,というとんでもない繁殖成績を残しています。そのうちの1頭であるマイネルネオスは,かつて母マイネプリテンダーに騎乗した柴田大知騎手に初のG1競走 (正確にはJ・G1競走) での勝利をプレゼントしています。この事実を知った時「縁って…あるもんなんだなあ…」と勝手にしみじみしました。
そして2023年にマイネルネオスの甥であるマイネルグロン (父ゴールドシップ,母マイネヌーヴェル) が中山大障害を制覇した時も「競馬って…血統のスポーツなんだなあ…」とこれまた勝手にしみじみしました。

マイネプリテンダーの血はマイネヌーヴェルからマイネテレジア,そしてオークスを制したユーバーレーベンへと受け継がれ,これからも発展していくことでしょう。

カラジは父Kahyasi,母Karamita,母父Shantungという血統で,1995年2月20日にアイルランドで誕生しました。
(掲載: GENERAL STUD=BOOK VOL.XLIII PART1 p. 1170)

イギリスで競走生活を送っていた頃のカラジは,平地競走では善戦こそするもののなかなか勝利を収めることができませんでした。その後オーストラリアの馬主に売却され,障害競走に転向したところ好成績を残しました。そして10歳で中山グランドジャンプを初勝利,12歳で三連覇を達成するなど大活躍を収めました。11歳で挑んだ2006年の中山グランドジャンプでは,2005年の中山大障害を3歳で制したテイエムドラゴン (テイエムドラゴンの父アドマイヤベガはカラジより1歳年下) を差し切って連覇を達成するなど,「なんだこの爺さん (褒め言葉)」としか言いようのない成績を残しています。2024年3月時点でJRAの最年長勝利記録を保持し続けている,という時点でカラジという競走馬の異質さが見て取れます。
13歳になった2008年には中山グランドジャンプ4連覇を目指して来日していましたが,残念ながら屈腱炎が発覚し,中山グランドジャンプに出走することなく引退を余儀なくされました。しかし,外国の,しかも障害競走馬としては異例の引退セレモニーが開催されました (その時の様子)。「からし」をもじった横断幕の写真は必見です。
その後JRAの同一競走連覇記録はオジュウチョウサンに塗り替えられますが,カラジの残したインパクトは後世まで語り継がれることでしょう。

2006年,11歳でゴーカイ以来のJ・G1連覇を達成した時の様子。顔の馬具が特徴的ですね。

ネヴァービートは父Never Say Die,母Bride Elect,母父Big Gameという血統で,1960年にイギリスで生産されました。この時代はスタッドブックの中に馬の誕生日の記載はありませんでした。
(掲載: GENERAL STUD=BOOK VOL. 34 p.92)

競走馬としては通算成績10戦1勝と結果を残せませんでしたが,良血であったことが評価され,種牡馬として日本に輸入されました。
種牡馬としては皐月賞 (芝2000m) を勝利したマーチス,優駿牝馬 (オークス) (芝2400m) を勝利したルピナスの二頭を初年度から輩出し,母父としても史上初のクラシック三冠牝馬であるメジロラモーヌや天皇賞 (秋) (芝2000m) を勝利し,種牡馬として短距離王サクラバクシンオーを輩出するなどの活躍を残したサクラユタカオーを輩出しました。

この馬をピックアップした理由は,日本の障害競走に強いインパクトを残した二頭の馬たちに血統がつながっていることです。
障害競走馬で唯一 (2024年2月時点) 顕彰馬に選定されたグランドマーチスの父であり,障害界の絶対王者オジュウチョウサンの母母母父 (人間で言うと曽祖母の父) でもあります。もしかするとネヴァービートの血脈からもう一頭障害競走馬として顕彰された馬が登場するのでは…と執筆しながらワクワクしています。