九州大学附属図書館文系合同図書室が所蔵する「旧松浦家蔵草双紙」のデータベースを公開する。「旧松浦家蔵草双紙」は、旧平戸藩主松浦家が所蔵していた草双紙類を、昭和40年に九州大学文学部が購入したものである。内訳は、短編合巻155点204冊、長編合巻21点279冊、その他4点5冊、総計180点488冊となっており、長短編合巻が大半を占める。中でも、表紙に「平戸藩蔵書」(朱陽・方印)との蔵書印と、朱筆による通し番号が付された短編合巻は、『甲子夜話』で名高い平戸藩第9代藩主、松浦清(静山)が蒐集したものを、第10代熈が整理した旧蔵書だと考えられる。同様に朱識語の残る黄表紙は、現在、松浦史料博物館に所蔵される。良好な保存状態で残る本コレクションは、松浦家の戯作蒐集、ひいては近世大名の書籍蒐集をうかがううえでも、貴重な資料群だといえよう。
今回、「旧松浦家蔵草双紙」全点の書誌情報をデータベース化するとともに、すべての短編合巻と、長編合巻の一部を、PDFファイルによる全頁画像として公開する。画像公開の方針は「読本コレクション」(リンク)にしたがった。
なお、この度の試みは、「次世代研究環境整備のための在九州戯作文献データーベースの構築」(学術研究助成基金助成金 若手研究(B) 研究代表者:菱岡憲司 研究課題番号:23720131)の一環として、九州大学附属図書館の協力のもと行ったものである。書誌調査に際し、大庭卓也(久留米大学)・菊池庸介(福岡教育大学)両氏の協力を得た。また撮影・画像加工の作業に際し、九州大学大学院生の平山聖悟・趙晶・吉田宰の協力を得た。
平成26年1月
有明工業高等専門学校 菱岡憲司