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日本古典籍 所蔵資料解説: 讀本コレクション

附属図書館研究開発室等の事業において電子化された日本古典籍を中心とする資料とその解説をまとめたものです。また、活字本の対応ページから検索できる資料もあります。

解説

 本データベースは平成7年度大型コレクションとして本学が購入した、全227部、756冊に及ぶ「讀本コレクション」の全貌を概観出来るように作られたものです。
 このコレクションは、宝永・正徳期から弘化・嘉永期に及ぶ、半紙本3冊から5冊ものの、教訓・奇談の類を主として集められており、馬琴などを中心とする所謂本格的讀本類は却って傍流として扱われている所に、極めて特徴のあるコレクションとなっています。
 特に増穂残口と佚斎樗山という、極初期の談義もの作家の作品については、よく集められており、讀本の源流を確かめるのに極めて役に立つコレクションであるといえましょう。
 又、同一タイトルの本でも、初版・再版、初印・後印といった書誌的部分に着目した集書が行なわれているので、その意味からも注目すべきものといえます。そこでそれらの特色を活かしたデータベース作りに留意した結果、
 一に、各作品を年代順に配列し、題簽・見返し・序・跋文・目録・初巻の初丁・奥付などの書誌情報部分を画像として辿ることが出来ること。
 二に、中でも比較的珍らしい作品を8点撰び出し、全丁の画像を提供し、詳細な書誌解題も準備すること。
 以上のような特徴を持たせたデータベースを作ってみました。但し、伝本そのものにかなり傷みの度合いの激しいものもありますが、それらも書誌的に重要な部分を、出来る限り画像化してあります。
 なお、コレクション全体の詳細な書誌目録は、平成11年度末を目標に作成し、提供出来る筈であります。

平成11年3月

九州大学附属図書館研究開発室員
九州大学文学部教授 中野三敏
               

 九州大学附属図書館(中央図書館)の所蔵する読本コレクションの全頁画像を公開する。すでに同コレクションは、九州大学附属図書館ホームページの日本古典籍画像データベースよりデジタル資料が閲覧可能であるため、今回あらためて公開するに至った経緯を述べておきたい。
 現在、デジタル化した古典籍資料をWEB上に公開し、閲覧を可能にする試みが各図書館で行われている。九州大学附属図書館でも、はやくから日本古典籍画像データベースとして古典籍のデジタル化に取り組んでおり、そのうち読本コレクションは平成11年3月に公開され、表紙・見返し・序跋・目録・内題・刊記など、書誌確認に有用な箇所を中心にWEB上で閲覧できる状態にある。なかでも希少価値の認められる8点については全頁画像を公開している。今回、一部にとどまっていた全頁画像の公開を、読本コレクションのすべてに対して行うものである。
 すでに書誌確認に必要な箇所は高画質の画像で閲覧可能であるため、今回は「判読可能なテキストの提供」という方針のもと作業を行った。これは、読本という近世小説の性格を鑑みて、テキストとして通読できることを重視したからであり、読本コレクションに収まる全作品をデジタル画像で通読できる環境を提供することを第一とした。そのため、高画質ながら画像取得に時間がかかるスキャナではなく、デジタルカメラによる撮影を行い、元画像を適度な容量に加工し、原本1冊ごとにPDF形式にファイル化しての提供とした。作業には細心の注意を払い、原資料と対照してのチェックも行ったが、デジタル・コンテンツはそれ自体で自立したものではなく、原資料の情報を得るための便宜的な存在であるとの姿勢で臨んだ。よって利用目的により、日本古典籍画像データベースや原資料の閲覧と使い分けて、本コンテンツを活用していただきたい。
 なお、この度の試みは、「次世代研究環境整備のための在九州戯作文献データーベースの構築」(学術研究助成基金助成金 若手研究(B) 研究代表者:菱岡憲司 研究課題番号:23720131)の一環として、九州大学附属図書館の協力のもと行ったものである。撮影・画像加工の作業に際し、九州大学大学院生の村上義明・工藤いずみ・趙晶・平山聖悟の協力を得た。

平成24年9月

有明工業高等専門学校 菱岡憲司