「古い資料」とひと口に言っても、出版物から手書きの記録まで、様々なものが残っています。
資料の読みやすさを考えるうえで手掛かりになるのが、書き手と読み手の存在です。
例えば現代でも、教科書に印刷された文字と、学生がノートに書く文字では、前者の方が圧倒的に読みやすいであろうと想像されます。
V.S. |
前者の読み手は「全国の生徒・学生」、後者の読み手は「ノートの持ち主」ということになります。教科書の場合、全国の人に確実に読んで欲しいわけですから、その字は読みやすくある必要があります。一方ノートの場合には、自分さえ読めれば十分ですから、読みやすさはあまり考慮されないはずです。
このように、想定される読み手が多ければ多いほど、書かれる文字は読みやすくなる傾向にあります。一方、読み手が少ない私的な資料であるほど、文字は読みにくくなるわけです。
書き手についても考えてみましょう。現代ではコンピュータのおかげで、同じ字形を至る所で見ることができるようになりました。しかし前近代の場合には、ほとんどの文字は手書きで、活字はごく一部にしか使われないという状況でした。そのため、どのような書き手だったかも、文字の読みやすさに大きく影響するのです。
それでは、「読み手」「書き手」を軸に、主な資料をみていきましょう。