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九コレで学ぶ「くずし字」の世界: おまけ

古い時代の資料に書かれた、読めそうで読めない「くずし字」。九大コレクション(九コレ)で九大所蔵の資料を眺めながら、「くずし字」の世界に触れてみましょう。

エゲレス語辭書和解 より

※画像をクリックすると拡大します

みどころ

手習いの素材を探す中で見つけた興味深い資料をご紹介します。

画像は、幕末に書かれた『エゲレス語辭書和解』の一部です。
資料の詳細は下記の「解説」をご覧ください。

画像は、「A之第四終」と題された部分の一部です。

見出し語のあとには(adj)などの品詞が添えられ、赤文字で発音が書かれています。Attributableが「エッティリビウッテビル」と書かれるなど、当時の編者たちにとって英単語がどのように聞こえていたのか、その一端が窺えて興味深い資料です。

各単語には日本語で語義が書かれています。Attractの派生語には「引付る」という語が多く登場しますが、「る」の字が場所によって違うなど、複数の字体が使われているのが分かります。また、Attributableに「寄帰すべき」、Attriteに「摺切れたる」など、変体仮名が自然に使われている様子もよくわかります。

内容といい、使われている文字といい、近世から近代への移り変わりが感じられる資料です。全体の画像はこちらから見ることができます。

解説

この資料については、石原千里「『エゲレス語辞書和解』とその編者たち」(『英学史研究』17,pp.109-124,1985)三好彰「未完の英和辞書『エゲレス語辞書和解』の編纂法の考察」(『東京大学言語学論集』36,pp.33-47,2015)に詳しく述べられています。

これらによりますと、『エゲレス語辭書和解』は嘉永3年(1850)に幕府の命により編纂が開始された英和辞書です。オランダ通詞(長崎などでオランダ語を扱う通訳)たちが編纂に着手し、英蘭辞典を下敷きに書かれました。アルファベット順に単語とその意味が列挙され、Aの部4冊・Bの部3冊まで書かれたところで編纂が中断し、刊行されることはありませんでした。

現在、長崎歴史文化博物館に原稿7冊があり、また九大にも原稿と同時期に書かれた写本5冊と、後の時期に書かれた写本7冊が所蔵されています。