「古文書」というと、日本史の教科書に登場したような触書をイメージする人もいるかもしれません。このような、役人が民衆に向けて発給した文書にもくずし字が用いられます。また、租税関係の文書や、土地紛争に関わる文書など、役所の中で読まれた文書にもくずし字が用いられました。
出版物が筆耕によって書かれたのに対して、行政文書は役人が(時代によっては寺社関係者なども)書くものがほとんどでした。そのため行政文書には、出版物とはまた違う独特な種類のくずし字が用いられました。さらに、「○○之儀」「○○候間、」「在間敷候(あるまじくそうろう)」など、もっぱら行政文書にのみ使われるような言いまわしも多く、読みこなすのに要求される知識は文字の形だけに留まりません。
前近代の日本史を研究する場合、このような資料を読まねばならない場面が非常に多くあります。
[久留米藩]岡野三右エ門風二被放候次第書
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久留米藩主有馬則維の家来、岡野三右エ門(三左衛門?)なる人物が、航海の折に大風に吹かれて遭難し外国船に救われ清国(現在の中国)へ漂着。帰国するまでの顛末が記録されています。複数の記録書を写したもののようです。「ゟ(より)」「御」「候」などの字に、独特のくずし方が表れています。
難易度★★ 行政文書 |