近世、江戸時代になると、商業としての出版が盛んになりました。今日でいうマンガのような、通俗的な絵入りの書籍が出版される一方、今日でいう学術書のような、最新の知識を広めるための書籍も出版され、多種多様な書物が世に出されました。こうした書物は、商品として売られたり、貸本屋によって貸し出されたり、いずれにせよ多くの読者に読まれることを想定したものでした。
浮世絵などと同じように、こうした出版物を作るのには様々な人の手が加えられていました。特に文字の面では、原稿の清書をなりわいとする「筆耕」と呼ばれた人々がおり、彼らが書いた文字が版木に写されて印刷されるのが一般的でした。このような版木によって印刷された書籍のことを「板本」と呼びます。
こうした背景から、前近代の資料の中でも、板本のような出版物は、比較的くずし字も読みやすい傾向があります。
本ガイドの「手習い三番勝負!」は、このような出版物から一部を抜粋して、練習用にまとめたものです。まだやってない人はぜひ腕試しを!
太平記 廣瀬文庫版 平仮名絵入本
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鎌倉幕府滅亡期から室町幕府成立期にかけて、南北朝の動乱を描いた軍記物語。画像は第十巻の挿絵で、鎌倉を攻めあぐねている新田義貞が、兜を脱いで海の龍神に祈っている有名な場面です。祈りが通じた義貞の軍勢は、干潟になった稲村ケ崎から鎌倉へ攻め入ることができました。
様々な版の板本が流布しており、上記の資料は「寛文頃刊無刊記本」にあたります。Cute.Guidesでは、今西祐一郎先生、田村隆先生による詳しい解説を読むことができます。ぜひご覧ください。
[参考]
Cute.Guides:「貴重資料(九大コレクション): 太平記 平仮名絵入本」(田村隆、今西祐一郎)
難易度★ 印刷出版物 |